製作は小泉作一、プロデューサーは飯島洋一、脚本は土方鉄人、撮影は伊東英男、美術は鈴木文男、音楽は泉谷しげる、録音は斉藤恒夫、照明は磯貝誠、編集は高城哲、助監督は成田裕介、ロケーション・マネージャーは長田孫作、スチールは滝本淳助。製作はアサルトプロダクション。
こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。
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インドシナにあるラオタイ国でウラン鉱脈に関する調査を行っていた日本人科学者二人が、地元ゲリラ愛国戦線によって拉致された。ことを表沙汰にしたくない政府の要人(草薙幸二郎:特別出演)は、極秘裏に警備会社社長(佐藤慶:特別出演)の元を訪ねる。傭兵ビジネスでひと儲け企む社長は、政府要人を懐柔。元陸上自衛隊レンジャー部隊教官でアンゴラ・中東を転戦した経験を持つ吉成(青木義朗)を隊長に指名、傭兵を組織して科学者を奪還する任務に就かせる。
「海外に興味深い仕事あり!」と書かれた警備会社の新聞広告。世の中に不満を募らせ、フラストレーションを溜め込んだろくでなしたちが、高額収入を謳うこの見るからに怪しげな広告に、“誘蛾灯に集まる昆虫”の如く引き寄せられて来た。
募集で集まった戦争マニアの無職青年・山本(飯島洋一)、街宣車に乗ってアジ演説行っていた右翼・雷電為吉(安岡力也)、スキンヘッドの胡散臭い中国人・李(清水宏)、頭が弱く呂律もおかしい小暮虎雄(たこ八郎)、如何にもお調子者そうな藤田(堀礼文)、口だけが達者な外国人ベルマ(立川談とん=現・快楽亭ブラック)らは即採用され、吉成の部下で副官の本多(椎谷建治)の指示のもと教練プログラムを開始する。
最初こそ、国内では手にできないはずの銃器訓練に目を輝かせる男たちだったが、その実践的でシリアスなプログラムに不審を抱き始める。
あまりのハードさに根を上げた小暮が訓練所からの脱走を図るが、彼はあっさり射殺されてしまう。ここに至って、ようやく吉成は本当の招集目的を告げた。男たちは、自分たちが本当の戦地に赴くと知り動揺を隠せない。吉成は、「行く気のない者は、今すぐに訓練をやめてここを去れ」と言い、この言葉を聞いて半分以上の者たちが脱落した。
もちろん、秘密を知った者たちを吉成が大人しく帰すはずもなく、脱落者たちも小暮と同じ運命を辿った。
訓練を終えた山本たち14名は、吉成に率いられてラオタイ国に飛んだ。現地では、かつて南ベトナム特殊部隊で戦った生え抜きのベテラン傭兵ラモ・ソン大佐(港雄一)と合流。早速、科学者奪還のためのミッションを開始した。
ジャングルにおけるゲリラ戦では、雷電が敵の餌食となるが吉成は躊躇なく彼のことを見捨てた。その非情さを目の当たりにした隊員たちは、否応なく自分たちが生死ギリギリのラインに立って戦争していることを実感する。
その中にあって、山本は水を得た魚のようにアドレナリンをほとばしらせて戦争に没入して行く。
部落長(梅津栄)からゲリラのアジトを聞き出した吉成たちは、アジトを急襲して科学者二人の救出に成功するが、人数でも土地勘でも圧倒的に有利なゲリラたちの前に、隊員たちは次々と殺されてしまう。逃走した藤田は竹槍を仕込んだ落とし穴で串刺しとなり、ラモ・ソンは底なし沼に飲み込まれた。
激しい戦いの中、自分とはウマの合った李を吉成が見殺しにするところを目撃した山本は、遂にキレて吉成や科学者めがけて銃を撃ちまくり、そのままジャングルの中に消えた。
ようやく敵陣を出た山本は、滝壷で一息ついていたが、事切れたはずの吉成が亡霊のように現れて山本に襲いかかって来た。驚愕の表情を浮かべた山本は、李の遺品だったナイフで吉成を滅多刺しにすると、再び迷宮のようなジャングルの奥地を夢遊病患者のように歩いて行くのだった…。
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和光大学が母体となり、卒業記念に映画を撮りたいと土方鉄人や飯島洋一が銀座並木座の支配人・小泉作一の元を訪ねたのがきっかけで、破格の製作費3,000万円を投じて作られた自主製作映画である。
なお、戦地のロケは御殿場、クライマックスで登場する滝のシーンは大井川の源流らしい。
この時期は、名画座と若き映画製作者が組んで自主製作する機運が高まっていたようで、石井聰互(岳龍)と上板東映(1983年公開の滝田洋二郎監督『連続暴姦』 は、この劇場が使われている)の支配人・小林紘が組んで、『狂い咲きサンダーロード』を撮っている。
今の目で見ればややサブカル的に映る部分もあるかもしれないが、何とも不思議な熱気に包まれた映画である。本作が提示するドラマ以上に、この作品の佇まいそのものがゲリラ的なキャラクターを纏っているように感じる。
こういう表現はいささか何だが、僕はこの作品を観ていて同じ時期に高橋伴明が撮ったピンク映画の強靭な傑作群と同質のテンションのほとばしりや熱量の放射を感じた。あるいは、如何にも独立プロダクション的なガッツと言い換えてもいい。
「今の目で見てサブカル的」と評したのは、安岡力也や泉谷しげる(傭兵メンバーの一人、グエン役で出演)、あるいは所ジョージ(ゲリラ役)やたこ八郎、立川談とんが出ていたりするからというのもある。
ちなみに、飯島洋一は『狂い咲きサンダーロード』にも出演しており、泉谷しげるはその美術を担当している。
自主映画としては超大作と言っていいくらいの予算がかけられているが、全体としての印象は良くも悪くもインディーズ的な荒っぽい勢いで93分を疾走する作品である。まさしく、好きな人にはたまらない作品だろう。
個人的には、当時キャリアのピークに達していた泉谷しげるの音楽が最高である。エンディング・テーマとして流れるのは、名作『都会のランナー』(1979)に収録されている「褐色のセールスマン」だ。
僕はこの作品を観ていて、自分が興味を抱いていた一見バラバラのようなピースが、実は地続きだったのだな…ということに気づいて、今更ながら感慨に浸ってしまった。
1980年といえば、僕が音楽オタクになるきっかけイエロー・マジック・オーケストラの『パブリック・プレッシャー』を聴きまくっていた時期で、その流れから大島渚監督『戦場のメリークリスマス』(1983)も観ているのだが、飯島が日本兵役で出演している。
ちなみに、『戦争の犬たち』で撮影を担当している伊東英男は、大島渚監督のハードコア・ポルノとして物議をかもした『愛のコリーダ』(1976)のカメラマンでもある。
本作の印象としてピンク映画を引き合いに出した訳だが、飯島はピンク映画にも役者や助監督で参加していた人である。そして、共演の港雄一といえば久保新二や野上正義と並んでピンク映画を代表する三大男優の一人であった。また、たこ八郎や快楽亭ブラックもピンク映画に出演している。
泉谷しげるも、高橋伴明プロデュースで『ハーレム・バレンタインデイ』(1982)というピンク映画を撮っており、土方鉄人が役者として出演している。
飯島洋一のマッドな存在感共々、当時の意気軒昂な自主製作の勢いを感じるには絶好の作品である。