2016年12月16日、目黒のライブハウスBLUES ALLEY JAPANで吉田美奈子 & THE BANDのライブを観た。
かなりオサレでラグジュアリーな会場は、小心者にはかなりのプレッシャーだった。会場はテーブル席と立ち見に分かれていて、僕はスタンディングがしんどいからテーブル席で見ていたけど、立ち見のお客さんとのシンメトリーが、ビジュアル的に貧富の差みたいなたたずまいで何とも落ち着かない。
吉田美奈子(vo)、土方隆行(g)、松原秀樹(b)、森俊之(keyb)、村上“ポンタ”秀一(ds)
吉田美奈子さんは、僕が最も好きなシンガーの一人だが、ライブを聴きに行ったのはこの日が初めてだった。さすがに往年ほどには高いキーが出ていなくて、ファルセットを多用していた気がする。そのためか、いささか歌の歯切れとか突っ込んでくるようなシャープネスは後退していたように思うけど、その代わり表現のニュアンスとか心に響く熱量はすごかった。
ライブは終始リラックスした雰囲気で、美奈子さんもおっとりとしたマイペースのMCで会場を和ませていた。
個人的には、バンドの演奏がとにかく最高で、スローなバラードにしても、ミッドテンポの曲にしても、アッパーでファンキーな16ビートにしても、有無を言わせぬ説得力とグルーヴに貫かれていた。
本当に、ずっと聴き続けていたいと思える最高の快感だった。
「LOVIN' YOU」と「頬に夜の灯」では美奈子さんが一緒に歌うことを求め、客席からのコーラスに合わせて歌唱するハート・ウォーミングな一幕もあった。
第二部には、特別ゲストとして浜口茂外也さんが2曲で参加。「午後の恋人」では繊細なフルートを、「GRACES」ではパーカッションでポンタとのタイトな掛け合いを聴かせてくれた。それにしても、浜口さんは年を重ねて益々お父さんの浜口庫之助さんに似てきたように思う。
そして、ラストは必殺のファンキー・チューン「恋は流星」「愛は思うまま」「TOWN」が畳みかけるように演奏された。オーディエンスの熱狂も最高潮に。
そして、アンコールに応えてしっとりと一曲。
美奈子さんは、第23回日本プロ音楽録音運営委員会においてライブCD『calling』収録のユーミン・カバー曲「春よ、来い」がベストパフォーマー賞に選ばれた。その時の審査員の一人、椎名和夫さんもこの日のライブに来ていた。
この日の美奈子さんのライブを僕なりに形容するとしたら、「匠と円熟」ということになるだろう。
彼女の歌唱を一流のミュージシャンによるタイトな演奏に身を委ねていたら、「年を取るというのも、なかなか捨てたもんじゃないな…」とフッと思ったのだった。
【Set list】
第一部
1.TALE OF THE SEASONS
2.ENCOUNTER
3.GIFTED
4.CRYSTAL
5.LOVIN' YOU
6.少しだけ…
7.FORGIVING
8.TEMPTATION
第二部
9.RADIANCE
10.頬に夜の灯
11.午後の恋人
12.GRACES
13.BEAUTY
14.悲しみの停まる街
15.恋は流星
16.愛は思うまま
17.TOWN
-encore-
18.THE LIFE