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破れタイツ『破れタイツのビリビリラップ』

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『破れタイツのビリビリラップ』(2017年8月13日公開)
企画:直井卓俊/監督・脚本・編集:破れタイツ/音楽:マチーデフ/撮影:福田陽平/配給:SPOTTED PRODUCTIONS
MOOSIC LAB 2017短編部門出品作
2017/日本/15分

着くのが遅れて時間に間に合わなかったとキレて車を降りていく客(鈴木太一)にため息をつき、その理不尽さをラップするタクシー運転手(マチーデフ)。浮かない顔で彼が車を流していると、かしましい関西弁をしゃべる若い女性二人組(破れタイツ:吐山ゆん、西本マキ)が乗り込んできて、前を走る車を追ってくれと叫んだ。
ガールズ映画監督ユニットとして関西で活動していた破れタイツの二人は、活動の拠点を東京に移した。上京一発目の仕事はアイドル(前田聖来)のPVを撮ることだったが、肝心のアイドルがスタジオをバックレて男と車で逃げ出してしまう。当然、プロデューサー(西村喜廣)はカンカンだし、この仕事のギャラが入らなければ来月の家賃もままならない二人は、アイドルをとっ捕まえて撮影を続行する選択肢以外なかった。

だが、切羽詰まっている割には追跡する自分たちの状況を楽しんでいるようにしか見えないお気楽な二人に、運転手は戸惑いを隠せない。おまけに、この二人は自分たちのしゃべりたいことをただまくしたてるだけで、人の話など全く聞いていない。
渋滞に巻き込まれて一度はアイドルの乗った車を見失ってしまうが、運よく公園に立ち寄っているアイドルを発見。破れタイツの二人は、いったんタクシーを降りた。そこに、PVのスタッフたち(中村祐太郎、松本卓也、今泉力哉)もドヤドヤと集まってくる。
男(小林勇貴)といちゃついているアイドルを見た破れタイツのマキは、一瞬固まってしまう。アイドルがじゃれついていたのは、自分の彼氏だったからだ。おまけに、アイドルからは「私の方がいいってぇ~」とのたまわれる始末。
アイドルは、またしても男の車で逃げてしまう。

タクシーに戻ってくる二人。すっかりしょげ返っているマキを励まそうとゆんは男の悪口を言うが、マキは彼氏の悪口言うなと逆ギレ。しばし言い合いした後、次は殴り合いに。その様子にうんざりする運転手。
ところが、二人に気を取られて前方不注意になった運転手は何かを轢いてしまう。慌てて車を停めると、目の前に血塗れになって起き上がる男の姿があった。プロデューサーだった。
仕事もキャンセルされ意気消沈した二人は、故郷に帰ってくれと言った。その態度に業を煮やした運転手は、お前らそんなんでいいのかとラップにのって檄を飛ばした。
その言葉に発奮した二人は、自分たちのテーマ曲「破れタイツのビリビリラップ」を歌い始める。

できた自分たちのPVを例のプロデューサーに持ち込むが、ウチは若い子専門だからとにべもなく断られる。「脱ぐならいいけど」というお約束の言葉とともに…。


如何にも、破れタイツらしい短編である。マチーデフ以外のキャストがすべて監督(前田聖来にも監督作がある)というのも、何とも人を食っている。
基本的には、ベタな展開と破れタイツのマシンガン・トーク、そしてマチーデフのラップで構成され、音楽で言えばサビの部分で自分たちのPVをぶちかますというさらに人を食った展開を見せる。その何とも身も蓋のない軽妙なバカバカしさとかとかしましさに、微苦笑してしまう訳だ。
本作中にも出てくる本音ともネタともつかない「映画よう知らんし」というフレーズ。確かに、破れタイツの作品群にはシネフィル的なマニア臭が皆無で、その如何にもミーハー女子的な軽妙さこそが、ガールズ映画監督ユニットを標榜する彼女たちの個性でもあり、僕はその部分に惹かれる。
オタク的な頑なさがなくて、妙に風通しがいいのだ。

で、本作の問題点はというと、これはもうリズム感に尽きるだろう。冒頭でマチーデフがぼやくようにラップするリズムがそのままこの映画のビートを刻むため、そのリズムからずれると映画的なグルーヴが阻害されてしまう。
破れタイツの二人がタクシーに乗り込み、お得意の関西弁マシンガン・トークを始める訳だが、その会話のリズムがオフビート気味のため、映画の流れがやや停滞するのだ。
そして、その停滞は「破れタイツのビリビリラップ」PVにも言える。音源のみで聴く分にはそれなりのリズム感なのだが、そこに映像が加わると何故か微妙にオフビートに感じられる。それは、破れタイツ作品のそもそもの持ち味がオフビートな語り口だということに依拠しているからだろう。
15分の短編作品だからこそ、この辺りのリズム感をビシッと決めてほしいのだ。

血塗れ作品を得意とする西村映造の西村喜廣がタクシーに轢かれて血塗れというシャレには、笑ってしまった。

 


本作は、東京に活動の拠点を移した破れタイツの挨拶状的な短編。
これからの彼女たちが、よりオリジナルな映像リズムを刻んでくれることを期待したいと思う。

 


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