『はりぼて』
監督:五百旗頭幸男、砂沢智史/撮影・編集:西田豊和/プロデューサー:服部寿人/語り:山根基世/声の出演:佐久間脩/テーマ音楽:「はりぼてのテーマ~愛すべき人間の性~」作曲・田渕夏海/音楽:田渕夏海/音楽プロデューサー:矢崎裕行
配給:彩プロ
公開:2020年8月16日
本当にやるせないと言うか色々なことを考えさせられるドキュメンタリーだった。
自民党が大半を占める保守王国の富山市議会で、政務活動費を不正に受け取っている議員がいることを2016年に開局したローカルテレビ局「チューリップテレビ」が次々とスクープしていき、結果的に14人の市議が辞職に追い込まれるという内容。
議員報酬を月額60万から70万に引き上げる法案が提出されたことが発端となって、チューリッピテレビが取材をしていく中で、次々と不正が明らかになっていく。市議会への情報開示を手段としてその資料を解明していくんだけど、当初はのらくらかわしていた市議たちもそのうち言い逃れ出来ない事実を積み上げられて、遂には認めざるを得なくなる。
おまけに、チューリップテレビの記者が情報開示請求したことを担当部局が議会局の担当にリークするという守秘義務違反まで発覚する。
市長に意見を求めても、「それは制度的に私がどうこう言える立場にない」と逃げまくる。
その市議たちの右往左往ぶりが最初こそ滑稽で笑えるくらいなんだけど、そのうち何とも息苦しくなってくる。それは、市民の税金を正しく市政のために使うという当たり前のことを何の躊躇もなく不正に受給した挙句、追及されるまで(あるいは、追及されても)あの手この手で言い逃れしようとする世の中の常識から乖離した彼らの意識に暗澹たる気持ちになっていくからだ。
市議会レベルでさえこうなのだから、これが都道府県議会、国政と規模や利権が大きくなればどうなるのかは容易に想像がつく訳だ。
おまけに、市議にはなり手がいない自治体も多く、さらには投票率も低い。それを考えると、悪い冗談では済まされない。今のコロナ禍や東京オリンピックに鑑みても、本当に考えさせられる。
映画は、それだけでは終わらない。監督に名を連ねる二人はチューリップテレビの記者で五百旗頭はキャスターも務めているのだが、二人にも思いがけないオチがついてこのドキュメンタリーは終わる。
そのエンディングは、まるで伊丹十三監督『マルサの女2』のような後味の悪さなんだけど、この映画はドキュメンタリーなのだ。
とにもかくにも、一人でも多くの人に観てもらって考えて欲しいドキュメンタリーだった。