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中村公彦『もうひとりのルームメイト』

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中村公彦監督のショート・ムービー『もうひとりのルームメイト』
プロデューサーは遊山直奇、脚本・編集は中村公彦、撮影監督は宮永昭典、撮影助手は鏡早智、録音は春本一大、助監督は阿草祐己、ヘアメイクは征矢杏子・片伊木彩名、美術は中山美奈、音楽はFra、制作担当は文信幸。製作はINNERVISIONS、SHOW TENT。
2012/30分/HD

作家志望の悠紀夫(仁田宏和)は、短期で仕事をしては、辞めて小説を書くということを繰り返している。しかし、いまだデビューのめども立たない彼に、同棲相手の鈴香(芳賀めぐみ)は不安を禁じ得ない。もう自分たちは、そう若くないのだ。
人気作家だった父・滋(川瀬陽太)は、母(渡会久美子)と悠紀夫に暴力をふるい浮気も日常茶飯事という人間だった。当然のこと悠紀夫は父を嫌悪していたが、その自分が今では父と同じ道を志しているという皮肉。

鈴香は、自分たちの将来以上に不安の種を抱えていた。それは、このところ悠紀夫がおかしな独り言を頻繁に呟くようになったことだった。そう、まるで「彼の目の前に、誰かがいるかのように」だ。
悠紀夫が話している相手、それは小さな女の子(齋藤映海)だった。楽しいことなど何もない幼少期のある日、悠紀夫は家の中に見知らぬ女の子がいることに気づく。彼女は、この家に棲みつく座敷童子だった。両親に女の子の姿は見えてないようだったが、いつしか悠紀夫は彼女と仲良くなって行った。
やがて家を引っ越すことになり、それきり悠紀夫は座敷童子とも別れてしまった。ところが、最近になって彼女がまた現れたのだ。昔と変わらぬ姿で。

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事情を知らない鈴香は、いよいよ不安に押しつぶされそうになる。彼女は、もはや悠紀夫を信じることができなくなっていた。

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そんなある日、悠紀夫を訪ねて来た母親が口にしたのは、驚くべき話だった…。


中村公彦でピンと来なくても、サーモン鮭山と聞けばピンとくる人もいるのではないか?…そんなにはいないか(笑)

What's Entertainment ?

本作は、中村の才気の一端を感じさせるなかなか良くできた小品である。

座敷童子という言ってみれば今さら的な素材を使いつつ、「実は、母にも見えていた」というツイストには唸った。見事にゾクッと来てしまい、中村の術中にはまってしまった。
ただ、30分の尺がネックとなった感は否めない。幼き日の悠紀夫の家庭事情の描写が、何とも舌っ足らずである。とりわけ、母親のパートが。
この辺りをしっかり語れていないから、いささか物語が分かりにくいものになっている。
それから、現在の悠紀夫が座敷童子と会話するシーンが、あまりにあからさまだ。彼は、鈴香に座敷童子が見えていないことを知っている訳だから、もっと女の子と会話する時に注意深くなって然るべきだろう。

役者陣について触れると、主役を演じる仁田宏和に存在感が薄いのが何とも物足りない。鈴香役の芳賀めぐみや、悠紀夫の両親を演じる川瀬陽太渡会久美子に力があるから、なおのことだ。
作品のキモである座敷童子を演じた齋藤映海は、何とも言えない無機質な不気味さがあっていい。それだけに、なおさら仁田の弱さが目立ってしまうのだ。
ちなみに、冒頭の占い館のシーンで占い師を演じているのは、相米慎二監督『ラブホテル』 (1985)での名演が記憶に残る志水季里子。そして、占い館にちらっと顔をのぞかせる女性は倖田李梨である。

本作を観ると、中村公彦には早く長編作品を撮ってほしいなぁと思う。
お勧めしたい一編である。

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