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世志男『野良猫の恋』

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世志男監督のショート・ムービー『野良猫の恋』
脚本は世志男、撮影は司木憲、音楽は沢水友彦、照明は太田博、録音は小林徹哉、ラインプロデューサーは篠崎周馬、助監督は中村和愛、ヘアメイクは芦川善美、演出部は太田美乃里・広正翔、制作助手は鎌田美緒、車両は椙田顕、現地協力は高橋嗣。制作は夢企画。
2012/25分/HD

取り立て屋としてしのいでいる正次(三元雅芸)。躊躇なく腕力に任せて、倒産ギリギリまで追い込んで債務者から金を取り立てるのが彼のやり方だ。今日も正次は、相方(妹尾公資)を従えて金の回収に勤しむ。
正次のターゲットの一人で町工場を経営する社長(安永和彦)は、従業員の給与まで持って行かれ頭を抱えている。
仕事の合間、正次はいつもの空き地で薄汚れた猫の縫いぐるみに話しかけている。ふと気づくと、傍らで正次の様子を窺っているセーラー服姿の女の子(片桐えりりか)がいた。彼女は、沙希という名前だった。
興味深げに話しかけて来る沙希に対して、気恥ずかしさからパンティが黒いだの何だのとへらず口をたたく正次。沙希は怒って、その場から去って行った。

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その日の仕事を終えた正次は、ラブホテルの一室で相方と回収した金を数えている。町工場の社長からはもっと金を巻き上げられたという相方に、すぐに返されたんじゃ利息がつかないと正次。
そこに、呼んでおいたデリヘル嬢が到着。相方は淫靡な笑みを浮かべて出て行った。

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デリヘル嬢を迎え入れた正次は、驚きの表情を浮かべる。それは、相手も同じこと。やって来たのは、沙希だった。彼女は、家出してホテトルJKクラブでバイトしていたのだ。
昼間の一件もあり、室内には険悪なムードが漂う。正次がスカートをめくると、出て来たのは黒いパンティではなくリラックマのワンポイントが入った白いパンティだった。お客には、こういう下着が受けるらしい。
正次は、先払いの金を投げつけるとキスを嫌がる沙希に無理やり口づけ、暴力的に彼女を抱いた。沙希は怒り心頭でホテルを出た。

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しかし、二人の関係はこれだけでは終わらなかった…。


う~ん。ダメでしょ、この作品。
僕は、本作を「なかのインディーズムービーコレクション 世志男×中村公彦作品特集 Vol.1」 (なかの芸能小劇場)で観たのだが、他に上映された世志男作品『SCAPEGOAT』(2009)と『消えた灯』(2010)も同じようなトーンでダメだった。この三本の中では、本作が一番いいのだが。
唯一、開き直り気味の勢いがあって『RUNゾンビRUN』(2010)には失笑した。このタイトルは、言うまでもなく『ラン・ローラ・ラン』からのいただきだよね。

世志男は、役者としてはおかしな役や変態役でも迷いなく演じてなかなかに潔いのだが、作家としては首をかしげざるを得ない。
使い古された昭和的ストーリーテリングと陳腐で感傷的過ぎる人物造形ゆえ、どうにもオリジナリティが見出せないのだ。それに、不可避的な低予算が拍車をかける。
一番の問題は、あまりに定型的かつアウト・オブ・デートな人物描写と科白回しだろう。

本作でまず指摘しなければならないのが、猫の縫いぐるみである。予算云々は置いておいて、ここで実際の子猫を使わないでどうする…と、観た誰もが思うはずだ。少なくとも、正次が“縫いぐるみの猫”にこだわる理由だけでも語らなければ。
そもそもが、こういう物語でやさぐれた男のナイーヴさを表現する語り口として、猫というのもどうかと思うが…。
そして、紗希。JK風俗嬢、リラックマのパンティ、「マジ、受けるんですけど」の言葉遣いも、2012年という制作時期を思えば、どうなんだ?と思う。
如何とも、感情移入しづらい。

その一方で、役者陣がなかなかの健闘をみせているから、何とも切なさが募る。
門井肇監督『ナイトピープル』 のナチュラル・ボーン・キラー役が印象深い三元雅芸は、ここでもなかなかにシャープな演技を見せる。とりわけ、妹尾公資をボコボコに蹴るシーンは、彼の面目躍如だろう。
この作品が初演技という片桐えりりかは、予想外にいい仕事ぶりである。ちょっと翳りのある表情も魅力的だ。ただ、モノローグの拙さは頂けないが。
ちなみに、町工場の社長を演じた安永和彦は、国沢☆実が旗揚げした劇団野垂レ死ニ のメンバーの一人である。

えりりかファンと三元ファンなら観ておいて損はないと思うが、世志男監督には今一度自分のドラマ性について考えて欲しいと思う。
個人的には、また片桐えりりかの出演作を観てみたくなった。

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