2015年3月28日、東新宿のライブハウス真昼の月・夜の太陽でNAADAが出演するライブ・イベント「夜の太陽たち」を観た。
僕がNAADAのライブを観るのは、これが39回目。前回観たのは2015年2月22日、場所は浅草KURAWOODだった。
NAADA : RECO(vo)、MATSUBO(ag) + 笹沢早織(pf)
では、この日の感想を。
1.Good morning
この日のPAは、音がとてもクリアーに響いてかなりインパクトがあった。この曲では、RECOのボーカルに備わっている“深み”がよく伝わって来た。
ただ、個人的な好みを言わせて頂くと、笹沢がつけるコーラスのフレーズがややしっくりこなかった。それは、次のパートで被せられたマツボの完璧ともいえるハーモニーの前では、なおさらだ。
曲の佇まいとしては、ブリティッシュ・トラッドを連想させる静謐な印象で、この曲に新たな魅力を付与していたように思う。
2.spilt milk
先ずは、ギターの絶妙なタイム感に耳を奪われる。ピアノのメロディも曲に広がりを与える。内容的には結構シニカルな歌詞を持った曲だが、この日のアレンジはクールなポップ・ミュージックに昇華されていていた。
とても完成度の高い演奏である。
3.puzzle
初お披露目の新曲。NAADAのレパートリーとしては、珍しくシビアな言葉をストレートにぶつけてくる感じの曲。心情的には、ある種のプロテスト・ソングとも取れるヒリヒリした手触りの歌である。
聴いていて、「何とも、人ごとではないよな…」と思ったりした。
4.echo
この曲は、RECOとマツボ二人だけでの演奏。タイトルの通り、この曲はPAによるボーカル・エコーの具合で出来が大きく左右されてしまうのだが、この日は音の分離もエコーの感じもなかなかよかった。何と言っても、RECOの歌がとても表情豊かだ。
後半のギター・ストロークで、音がやや濁り気味に感じた。
5.fly
歌い出しの部分が、やや重すぎるかな…とも思ったが、それは最初だけですぐにギアが入った。このトリオ編成でのアレンジメントとしては、ひとつの理想形ではないか。
今回の演奏を聴いて感じたことは、ゴスペルを通過した、NAADA流ソウル・ミュージックなんじゃないかということである。
6.愛 希望、海に空
僕は事前にこの日のセット・リストを知らなかったのだが、5曲目まで聴いた時に「この構成なら、ラストは『愛 希望、海に空』を持ってくれば最高だよな…」と思ったんだけど、その通りの選曲であった。
「echo」の演奏でも感じたことだが、ギターのストロークでやや音が濁り気味に聴こえる。ピアノにも、やや粗さを感じた。
それが、静寂さを伴ったストイックな演奏になると一転、会場の空気がガラッと変わった。それはもう、マジックを見ているように劇的である。
ただ、この曲だけややPAに安定感が欠けており、エコーの掛かり方が不安定に聴こえた。それが、残念である。
演奏終盤、曲の音圧がどんどん上がって行き、歌が器楽的かつエモーショナルになる展開は、グッと心に響いた。
この日は、前回の浅草KURAWOODと同じベースレスのトリオ編成だったが、受ける印象はまったく違っていた。選曲も、ここしばらくは聴かれなかった曲が演奏されて、新鮮だった。
聴いていて感じたのは、この編成で曲にどんな表情が付与できるかという明確なテーマの元、アレンジメントを煮詰めて来たのではないかということだ。
この日のライブをトータルで見た時、演奏の佇まいがフォーク的繊細さを持ちつつも、最終的な音のアウトプットがアコースティク・ソウル・ミュージックとして僕の耳には響いた。
その質の高さも含めて、今の彼らにしか表現できないオリジナリティがしっかり貫かれた意義深いライブだったと思う。
次のライブは未定だが、NAADAの次なるステップを予感させる一夜であった。