破れタイツは、ともに1989年生まれで京都造形芸術大学映画学科監督コースに入学した西本マキと同俳優コースに入学した吐山ゆんが2010年4月に結成したガールズ監督ユニットである。二人は、脚本・編集も手がけ、女優としても作品に出演する。
なお、破れタイツは女優として2015年夏に公開が予定されている「MOOSIC LAB 2015」出品作のサーモン鮭山監督×ベッド・イン『101回目のベッド・イン』にも、キャスティングされている。
本DVD収録作品は、『じ ぞ う』『破れタイツ』『やぶカン!』『てんぐ』の4本。
『じ ぞ う』(2011) 23分 処女作
第4回したまちコメディ映画祭in台東(2011)にて、グランプリ賞・観客賞・U-25特別賞の三冠を受賞。
町中に置かれたお地蔵さんの目線で、淡々と通りかかる住人たちを観察してモノローグするオフビートな作品。独特のテンポと、やや斜に構えたシニカルな語り口、絶妙の間と軽妙なくすぐりに二人の非凡さを感じさせる小品である。お地蔵さんを日参するおばちゃんにインパクトあり。
三冠受賞も納得の良作である。
『破れタイツ』(2012) 45分 第二作
京都造形芸術大学の卒業制作として撮られた一本。瓜生山賞受賞(京都造形芸術大学は、学校法人瓜生山学園の大学である)。
破れタイツの二人が親友の高校生に扮して、グータラでなかなか男運に恵まれない日常を描いた作品。
ある意味、作品のアクセントになっているのはオカン役・松倉智子のテンポいいおばちゃんしゃべりである。不貞腐れた吐山も悪くないが、西山の演技にはやや粗さが目立つ。
物語に色々な素材を詰め込み過ぎの感があり、45分という尺がいささかだるいと思う。感傷的な仕掛けも、ちょっと描き方が中途半端ですっきりしない。もう少し、二人のダメ恋愛とダラダラした学園生活にフォーカスして描いた方が、映画としての勢いを形成できたのではないか。
あと、個所によっては音楽と科白が同じレベルで被さってしまい、何をしゃべっているのか聞きづらいところがあった。
余談ではあるが、指導として高橋伴明と林海象の名前がクレジットされている。
『やぶカン!』(2012) 19分 第三作
第5回したまちコメディ映画祭in台東(2012)にて、U-25特別賞を受賞。
前作『破れタイツ』の前半部分の内容を練り直して撮った作品。故に、起承転結(というほどの物語構成はないけど)の起承くらいでポンっと終わってしまう。作品上は、「破れタイツ+オカン=やぶカン!」とクレジットされる。
どういう経緯でこのリメイク的作品が撮られたのかは分からないが、作品としての緻密さと演出のキレは前作よりも数段上だろう。できれば、もう少し長めの尺で観たかったよな…と思う。
撮影協力クレジットに寺脇研の名前があるから、2012年に開催された「寺脇さんのゆーとーり♪上映会」との企画的な流れで製作されたのではないかと推察する。
『てんぐ』(2013) 21分 第四作
「おめん」を改題。このユニットにおける、コメディ作風にひとつの洗練がもたらされた佳作である。
天狗様のツイストがなかなかに秀逸。主人公のてんぐマニアの男の子の描き方も、やや類型的な情緒性ではあるが手堅い。しっかりした構成とドラマ的メリハリに、この二人の作家的進化を感じさせる。
浅越ゴエが友情出演している。
破れタイツの二人を知ったのは、実は今年に入ってである。前述した『101回目のベッド・イン』にこのユニットが女優として参加したことで、初めてその名前を知ったのだ。
僕は、脚本を担当した小松公典さんや監督のサーモン鮭山さんとも面識があるので、『101回目のベッド・イン』撮影時にエキストラとして参加したのだが、吐山さんも西山さんもとても魅力的で可愛い女性であった。
まあ、クリエイターの立場からすれば、自分たちのルックスについて云々されることなど大きなお世話かもしれないが、二人とも女優としても活動しているから大丈夫だよね!(笑)
本作には収録されていないが、2014年には第五作目『女子!読み切り!コミックワールド!』を完成させている。そちらも、是非観てみたいものである。
さらなる躍進を期待したいと思う。