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三池崇史『極道大戦争』

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2015年6月20公開、三池崇史監督『極道大戦争』



製作総指揮は佐藤直樹、製作は由里敬三・藤岡修・久保忠佳・奥野敏聡、エグゼクティブプロデューサーは田中正、脚本は山口義高、撮影は神田創、照明は渡部嘉、美術は坂本朗、音楽は遠藤浩二、主題歌はKNOCK OUT MONKY「Bite」(ビーイング)、録音は中村淳、装飾は谷田サチヲ、音響効果は柴崎憲治、編集は山下健治、VFXスーパーバイザーは太田垣香織、スタイリストは薮内勢也、メイクは石川奈緒記、スタントコーディネイターは辻井啓伺・出口正義、助監督は原田健太郎。
製作は日活・ハピネット・キャンビット・OLM、制作プロダクションはOLM、制作協力はジャンゴフィルム・日活調布撮影所、企画・配給・宣伝は日活。
宣伝コピーは「熱く、美しく。 噛まれたら、みんなヤクザ。」


こんな物語である。

神浦組組長の神浦玄洋(リリー・フランキー)は、堅気に手を出すことを法度とする今時古風な極道で、町の人々からの信望も厚い。背中には見事な刺青が彫り込まれ、その彫り物と男気に惚れて影山亜喜良(市原隼人)は神浦組に入った。



神浦は、不死身とも思えるタフさと腕っ節で他組との抗争では負け知らずであった。情にも厚い神浦は、不況で息子と心中しようとする男(中村靖日)に救いの手を差し伸べ、他の組になぶりものにされていた杏子(成海璃子)を助け出して入院させたりと相も変わらず住民にとっては頼れる親分であり続けた。



影山は、ますます神浦に心酔するものの、それとは裏腹に極道稼業自体にはいささか退屈気味だ。しかも、何故か神浦は影山のことを可愛がり、そのことで影山は兄貴分から目の敵にされてもいた。
ある時、神浦に連れられて影山は小さな小料理屋に連れて行かれる。店主の法眼(でんでん)がコップに注いだ赤い液体を飲み干した影山は、慌てて店を飛び出すと吐き出してしまう。それは、鉄のような味がした。
その店には隠し牢があり、そこではヤクザ者たち(渡辺哲、森羅万象、他)が更生労働として編み物をさせられていた。



ところが、よそから刺客(テイ龍進、ヤヤン・ルヒアン)が現れ、彼らの手によって神浦のタマが取られてしまう。
影山は、狂犬の手によってねじ切られた神浦の頭は抱きかかえた。すると、神浦の目がくわっと見開かれたかと思うと「我が血を、受け継げ」と言って影山の首筋に噛みついた。
焼けるような熱さと激痛の後、影山は激しい乾きに身悶えする。
そして、目の前にいた人間の首に彼も噛みついてしまう。すると、あろうことか噛まれた男もヤクザ化してしまう。ヤクザ化した者はまた他の人間に噛みつき、町の人々は次から次へとヤクザ化して行ってしまう。



神浦に刺客を指し向けた者、それは組の実権を狙っていた若頭の膳場壮介(高島礼子)たち神浦組の者だった。



ヤクザ・ヴァンパイアと化した影山は、神浦から授かった力を徐々に覚醒させながら人の首筋に齧り付きたい欲望と闘いつつ、かたき討ちをしようと立ち上がる。
その影山の息の根を止めるべく、彼らは最終兵器を町に呼んだ。それは、緑色のカエルの着ぐるみに身を包んだ刺客、KAERUくん(三元雅芸)だった。



果たして、影山と町の運命は…。




今では予算のかかった大作・話題作をコンスタントに発表している三池崇史だが、本作は彼のVシネマ時代をほうふつさせる原点回帰的な破天荒任侠ヴァイオレンス・コメディの怪作である。思いつきとノリと勢いだけで、ひたすら125分突っ走る。
昭和任侠ものの佇まいにヴァンパイアをフュージョンさせて、ひたすらバカバカしいストーリーテリングとハイ・テンションでスピード感溢れる格闘シーンを詰めるだけ詰め込んだ内容は、作風以上に製作姿勢の方が暴力的ともいえる。

下らなさフル・スロットルのネタの数々はもちろん確信犯的な訳だが、僕が気になったのはその料理手段と演出作法である。
神浦を中心に据えた前半の展開は、日活撮影所に組まれた昭和ノスタルジー漂うオープンセット共々とても魅力的である。組同士のいがみ合いや抗争シーンにもねじ伏せるような圧倒的迫力がある。
ところが、神浦が刺客に倒されて物語の中心が影山とヤクザ・ヴァンパイア、そして敵との戦いに移った時点で、一気に映画は失速してしまう。
何というか、コメディ部分のドラマ的な煮詰め方が中途半端で、それまでは有機的に動いていた登場人物たちが空回りし始めるのだ。
バトル・シーンのテンションは変わらないのだが、ただそれだけで物語の方はドラマ的な核が失われてしまっている。だから、観ていていささか退屈なのだ。

こう言っては何だが、予告編を観るとワクワクするのだが、実際に本編を観るとその尺が冗長に感じる。
いくら初心に戻って低予算Vシネの世界を目指したとはいっても、破天荒な勢いがそがれてしまっては演出として問題ありと言わざるを得ないだろう。悪い意味で、投げやりで中途半端な印象を受けるのだ。

本作で圧倒的なのは、何と言ってもリリー・フランキーの演技である。市原隼人成海璃子も悪くはないが、リリー・フランキー程強い印象を残せないのはやはり映画失速の一因のような気がする。
その一方で、高島礼子の演技に冴えが感じられない。そもそも、何で若頭が男の設定なのに、高島をキャスティングしたのだろうか?チープな宝塚とでもいった演技に違和感があり過ぎる。
一方、まったく顔は出て来ないがKAREUくんの中の人、三元雅芸のキレキレの動きには目を見張る。ただ、彼のアクションが物語的カタルシスに繋がらないのがもどかしい。

バカバカしいナンセンスなヴァンパイア極道映画という一発芸的なアイデアは決して嫌いではない。
だが、バカバカしさにはバカバカしさなりに筋は通してほしいと思う。それでこその任侠ものだろう。

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