製作は及川次雄、プロデューサーは藤原健一・太田太朗、脚本は杉本順平・石川二郎、撮影・照明は小山田勝治、音楽は與語一平、編集は石川二郎、録音は沼田和男。配給はオールインワンエンタテインメント。
宣伝コピーは「その龍は、黒煙と共に悪を喰らい尽くす!!」
こんな物語である。
元警察官で、現在はスタントマンをしている赤根龍斗(虎牙光揮)。龍斗の夢は、ヒーローものの主人公を演じることだが、今はまだ夢に向かってキャリアを築いている最中だ。龍斗には、かつてはスタントをしていた古内桃子(武田梨奈)という婚約者がおり、彼女は妊娠している。
龍斗は、ガンエフェクト技師の今野徳治(六平直政)から撮影に使う警察官の制服が欲しいと頼まれ、疎遠になっている刑事の父・正蔵(斎藤洋介)に会いに行く。龍斗は、正蔵に会ったついでのように、自分には妊娠している婚約者がいることを告げた。
すると、正蔵は「孫の顔が見れるな。これで、定年後の楽しみができた」と嬉しそうに笑って手を振った。
すべてが順調に見えた龍斗の生活が、一変する。正蔵が未成年を強姦して、自殺を図ったとの報が警察からもたらされたのだ。
訳も分からず、正蔵の遺体確認に行った龍斗。ところが、父の亡骸は、明らかに酷い暴行の痕があり、どう見ても自殺体には見えなかった。そもそも、絵に描いたような堅物刑事の父が、こんなことをするはずがない。
龍斗は、警察学校時代の同期で、今は警視庁の刑事として順調に階級を上がっている西条祐介(永岡佑)に食ってかかる。
自殺した犯罪者の家族だからとの理由で理不尽にキャストを降ろされ、桃子の家族に会う約束も延期された龍斗は、独自に調査を開始する。
すると、闇社会で蠢くヤクザ組織と、それを影で利用する警察組織の恐るべき実態が浮かび上がって来る。
龍斗の行動に注視していた警察組織は、龍斗にも牙をむき始め…。
石川二郎、藤原健一、小山田勝治、與語一平、亜紗美、稲葉凌一、森羅万象といったスタッフ&キャスト陣を見れば、一部のピンク映画やVシネマ好きの方なら反応してしまうことだろう。
で、作品の内容も、言ってみればそういったテイスト満載の出来と言っていいと思う。良くも悪くも。
だが、本作を虎牙光揮と武田梨奈が出演した本格アクション映画と捉えて観た向きには、いささか首を捻る出来だろう。
もちろん、虎牙光揮、武田梨奈、木原勝利、亜紗美が見せるダイナミックなアクション・シーンの数々は、十分に見応えありだ。
だが、いささか時代錯誤したような粗雑なストーリー展開は、ある意味ジョークのようですらある。あえて監督が狙ってのことかもしれないが、それにしてもな…と思ってしまう。
それから、千葉誠治監督『忍者狩り』の演技でも感じたことだが、虎牙光揮のトゥー・マッチなくらいに力んだ芝居も観ていて気になる。
龍斗、祐介、宮島春樹(木原勝利)の三人が地獄を味わった警察学校での常軌を逸した壮絶ないじめのエピソードにしても、公安の潜入捜査にしても、腐敗した警察組織の暗躍にしても、何かのカリカチュアにしか見えないし、今野徳治の無頼ぶりもいささか浪花節的にオールド・テイストの感がある。
大体において、龍斗が窮地に陥った時、すべからくジャケットの下にスタント用の血糊と火薬が仕込んであるというご都合主義にはさすがに苦笑してしまった。
あまりに分かりやすいヒールと、悪ノリに近い犯罪行為、そして雌雄を決するラストの決闘シーンに至るまで、何処までがシリアスで何処までがジョークなのか…と何度も首を捻ってしまった。
個人的に本作最大の見所といえば、武田梨奈と亜紗美のバトル・シーンだった。武田に関しては、日常シーンにおける愛らしい演技にも惹かれた。
それから、流石の存在感を見せる斎藤洋介と六平直政、チープな小悪党的森羅万象も悪くない。
アクション・シーンと役者陣にはそれぞれ魅力的なだけに、何とも残念な出来であった。