2016年2月4日、千駄木のBar Issheeで加藤一平+纐纈雅代+坂口光央+藤巻鉄郎のライヴを観た。
僕は渋谷にあった頃のBar Issheeには2度行ったことがあるけど、千駄木に移転してからは初めてである。
加藤一平(g)+纐纈雅代(sax,voice)+坂口光央(keyb)+藤巻鉄郎(ds)
第一部
まるで怪獣の体内に飲み込まれて鼓動を聞いているような不穏にしてカオスな音出し。纐纈が馬のいななきを思わせるブロウをかまし、各パートが破壊的な音量にヒートアップしていく。ノイズの砂嵐吹きすさぶステージだが、そこには不思議な清々しさを感じる。個人的には、ドラムスの音にもう少しトランス・グルーヴな音抜けの良さがあれば、と思う。
そこからエレクトロ・ダブ的な展開を聴かせるのは悪くないが、さらに異形的な音楽文法が持ち込めればより個性的な音になるはずだ。
再度、音圧を上げて混沌とした世界を出現させると、何度も緩急を付けながらノイジーでフリーキーな中にもしっかりとグルーヴするサウンドが刺激的。
この4人ならではの化学反応にまでは至らないものの、若々しい勢いを感じる演奏が好ましかった。
第二部
虚無僧が吹く尺八のような旋律のサックスに誘われて、能狂言を思わせる純邦楽的な音像を聴かせるのが面白い。あえて音に隙間を作り、そこに纐纈が念仏を唱えるようなヴォイシングを聞かせると、続いてエリック・ドルフィーのようなサックスの咆吼に加藤の幾何学的なギターが被さる。PAのせいか、やはりドラムスの音抜けの悪さがいささか気になる。
随所で纐纈がアンプリファイドなカリンバを奏でるのだが、キーボードの音と被り気味で、ほとんど聴き取れないのが惜しい。
色々と練られたアンサンブルだが、メンバーの若さ故かノイズとしてはその演奏ギミックが想定の範囲から逸脱しないのがもどかしい部分もある。
その後、纐纈のフィジカルなサックスを中心に据えたアンサンブルに推移。ノイズからフリーへとシフト・チェンジするような演奏がいい。フリー・ジャズあるいはフリー・インプロヴィゼイションをメインにして、そのバック・グラウンドにノイズを放出するアンサンブルの方が、この4人のミュージシャンシップがしっかりと機能してオリジナリティを発揮するように思う。ノイズに囚われすぎないフリー・ミュージック的な演奏とでも言えばいいか。
ギター、キーボード、ドラムスが奏でる不協和音的な音像は、まるでサウンドスケイプのような佇まいが面白い。そこから演奏はスピードを上げていき、超高速のハードロック的ギターが炸裂すると、メンバー全員でカオス・トルネードとでも言うべき音の塊を叩きつけるラストは、強烈なカタルシスをもたらしてくれた。
会場がBar Issheeということもあり、ノイズとフリー・インプロヴィゼイションに終始する演奏だったが、僕は十分に楽しめた。
これからさらなる音楽的進化を見せるであろう若いミュージシャン4人のプレイには、リアルな今の音が宿っていて僕の耳にもいい刺激だった。
そんな一夜であった。