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ジョン・ランディス『ブルース・ブラザース』

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1980年6月16日(日本は1981年3月28日)公開、ジョン・ランディス監督『ブルース・ブラザース』




製作はロバート・K・ウェイス、製作総指揮はバーリー・ブリスタイン、脚本はダン・エイクロイドとジョン・ランディス、撮影はスティーブン・M・カッツ、美術はジョン・J・ロイド、音楽監修はアイラ・ニューボーン、編集はジョージ・フォルシー・ジュニア、衣装はデボラ・ナドゥールマン、配給はユニバーサル・ピクチャーズ。


こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。

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イリノイ州シカゴ郊外に位置する刑務所。強盗による3年の刑期を終えて出てきたジェイクことジョリエット・ブルース(ジョン・ベルーシ)を出迎える弟のエルウッド・ブルース(ダン・エイクロイド)。
エルウッドの乗っている車がパトロール・カーでジェイクはムッとするが、「前の車(通称ブルース・モービル)は処分した。この車は、警察のオークションで格安に買った」とエルウッドはどこ吹く風だ。

まず、エルウッドは渋るジェイクを連れて聖ヘレン養護施設のシスター、通称ペンギン(キャスリン・フリーマン)のところへ行く。二人はこの孤児院育ちであり、シスターは言ってみれば母親同然の存在だった。




シスターは、資金難のために固定資産税5,000ドルが払えず、施設が立ち退き寸前であることを二人に告白する。ジェイクは協力を申し出るが、犯罪で得た汚れた金など受け取れないと堅物のシスターは断った。そして、口汚いジェイクとエルウッドを自分の部屋から叩き出すのだった。




何とか施設を救いたい二人は、かつて世話になった孤児院の管理人カーティス(キャブ・キャロウェイ)に相談する。カーティスは、クロオファス・ジェームズ(ジェームズ・ブラウン)神父の礼拝に出席してもみろと言った。




信仰心の欠片もないジェイクを連れて、エルウッドはジェームズ神父の移動礼拝が行われているプロテスタント教会に行った。すると、ジェイムズ神父の説話はまさしく真のゴスペルで、信者達は神父のシャウトとバンド演奏に熱狂していた。
その光景に圧倒されたジェイクは、バンドをやれという神の啓示を聞く。二人は、早速ブルース・ブラザース・バンド再結成に向けて動き出す。バンドで一儲けして、孤児院を救う計画だ。だが、エルウッドの話によると、かつてのバンド・メンバー達はすでに違う人生を歩み始めていた。
おまけに、信号無視したところを巡回中のパトロール・カーに止められたエルウッドは、運転免許が失効中だったことがばれて逃走。壮絶なカー・チェイスの末、ショッピングモールを盛大にぶち壊してひとまず警察を振り切った。



エルウッドは自分が身を寄せているオンボロの宿にジェイクを連れて行くが、怒り心頭の警察は早朝に宿を突き止めて逮捕にやってくる。
そこに、謎の女(キャリー・フィッシャー)がやってきてホテルを破壊。瓦礫の中から出てきた二人は、何もなかったように車を発進させた。
道すがら、街頭演説していたナチス信奉者の政治団体を新ブルース・モービルが蹴散らし、二人は警察のみならず、ネオナチ政党からも追いかけられる羽目になった。

キーボード担当だったマーフことマーフィ・ダン(同)は、ギターのスティーブ・クロッパー(同)、ベースのドナルド・ダック・ダン(同)、ドラムスのウィリー・ホール(同)と一緒にホテルの冴えないお抱えバンドをやっていた。
まずは、この四人を口説き落とした二人は、続いて嫁(アレサ・フランクリン)と一緒に
バーガー・ショップをやっているギターのマット・マーフィ(同)のところへ。マットは、妻の反対を押し切り二つ返事でバンド加入を快諾。店員でサックス奏者のブルー・ルー・マリーニ(同)もマットに同行した。




高級フレンチ・レストランの支配人として成功していたトム・マローン(同)はバンド加入を拒んだが、営業妨害する二人に根を上げて渋々バンドに加わった。トランペットのミスター・ファビュラス(アラン・ルービン)も合流して、かつてのメンバー全員がそろった。




バンド・メンバー全員でレイ(レイ・チャールズ)が経営するレイ楽器店を訪れ、中古の楽器をツケで買った。これで、準備は万端だ。



バンド・メンバーを集めたはいいが、実のところ仕事の当てはさっぱり。おまけに、納税の期日も迫っていた。ジェイクは、道沿いのパブでバンド演奏があることに気づき、出演バンドになりすましてそこで演奏してしまう。
ところが、ギャラよりメンバーの飲み代の方が高くつき、代金を踏み倒して店から逃走。おまけに、出発前に本来演奏するはずだったカントリー&ウエスタン・バンドとも一悶着起こして、そのバンドからも追いかけられる羽目になった。
バンド・メンバー達からも不満が噴出して、ジェイクは最後の手段に出る。かつての馴染みプロモーターだったスライン(スティーブ・ローレンス)に掛け合い、一晩だけのコンサートをパレス・ホールで開催することになる。

ありとあらゆる場所にポスターを貼り、ブルース・モービルでコンサートの宣伝に駆け回り、ジェイクとエルウッドは広報活動に東奔西走。カーティスも孤児院の子供達にコンサートのビラまきを手伝わせた。努力の甲斐あって、パレス・ホールは満員。だが、観客の中にはバートン(ジョン・キャンディ)以下警察ご一行、ネオナチ政党員達、カントリー・パブ

の経営者ボブ(ジェフ・モリス)、カントリー・バンドの面々も顔をそろえていた。
が、肝心の二人が会場に来ない。二人は、ガス欠を起こして近くのガソリン・スタンドに駆け込んだのだが、その店もガソリンを切らしており、給油車を待っていたのだ。そんな緊急事態にもかかわらず、エルウッドはお客の女(ツイッギー)をナンパする始末。

待ちくたびれた観客のブーイングが最高潮に達しメンバーも青ざめるが、その窮地をカーティスが救った。彼は、見事な喉で「はすっぱミニー(ミニー・ザ・ムーチャー)」を歌って拍手喝采を浴びた。
そこに、ジェイクとエルウッドが到着。ようやく、ブルース・ブラザースの演奏が始まった。観客はバンドの演奏に熱狂、コンサートは最高の盛り上がりを見せた。




二人は、バンドに演奏を続けるよう指示すると、こっそりステージから抜け出した。バック・ステージで待っていた有名レコード会社の重役は、バンド演奏にいたく感激した様子で、一万ドルでレコーディング契約を打診。もちろん、二人は申し出を受け入れると、契約金の一部をレイ楽器店の支払いに回してほしいと依頼した。

レコード会社の重役は、若かりし頃にこのホールの用心棒をしており、ホールからの抜け道を二人に教えてくれた。しかし、ホールを出たところで、例の女がジェイクを待ち伏せしていた。彼女はジェイクの元婚約者。結婚式当日にジェイクが姿をくらましたことで、ずっと彼の命を狙っていたのだ。
だが、ジェイクは彼女を巧みにかわすとエルウッドとともに逃走した。

翌日は、固定資産税の納税期日。二人の車は、追っ手との派手なカー・チェイスを繰り広げながら、シカゴ市役所本庁舎に到着。そのまま、納税課のフロアに駆け込むと、警官達の取り囲まれながらも納税担当職員(スティーブン・スピルバーグ)に税金を支払った。




刑務所の広い食堂施設。囚人服を着たブルース・ブラザース・バンドは、「監獄ロック」を演奏して囚人達を熱狂させるのだった。

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とにかく、リズム・アンド・ブルース好きの方、とりわけアトランティック・レコード系のソウル・ミュージックが好きな人には正真正銘マストな一本である。
というか、ソウル・ミュージックのファンでこの映画を観てない人なんているんだろうか?

…と断言したくなる、ミューカル・コメディの大傑作である。

言うまでもなく、NBCの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」の人気コーナーに端を発したバンドであるブルース・ブラザースをハリウッドに持ち込んだ企画映画で、今なら『ブルース・ブラザース~ザ・ムービー』とでも言うべき作品である。
なお、ブルース・ブラザースの前身が「SNL」に初登場したのは、1976年1月17日「キラー・ビー」のスケッチで、1978年にリリースしたアルバム『ブルースは絆』はビルボード・チャートの第一位に輝いた。





内容的には、如何にも「サタデー・ナイト・ライブ」的というか、物量作戦の大味な力業で走りきるまさしくアメリカンなアバウトさが炸裂する映画だろう。
ある意味、爆笑と言うより「よう、やるわ」的に失笑しながら観てしまう作品である。
冒頭の使用済みコンドームとか、キャリー・フィッシャー演じる謎の女とか、ホモセクシュアルなオチが出てくるネオナチとか…。
閉鎖したショッピングモールを使って破壊の限りを尽くすシーンとか、ラスト前の「一体、何台の車がスクラップになったんだ!?」的カーチェイス・シーンとか、シカゴ市庁舎での群衆シーンとか、ど派手な展開に言葉を失ってしまうほどである。

だが、やはり本作は一流のミュージシャンをそろえた素晴らしい演奏シーンと、最高に熱いダンス・シーンに身を委ねるべき映画だろう。
ジェームズ・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズは言うに及ばず、渋いジョン・リー・フッカーの弾き語りや、かの有名なキャブ・キャロウェイの踊りと歌唱。
もちろん、ダン・エイクロイドのブルース・ハープやジョン・ベルーシの側転・バク転も決まったブルース・ブラザース・バンドの演奏も最高にソウルフルだ。





スティーブ・クロッパーとドナルド・ダック・ダンは、言うまでもなくメンフィスはスタックスの最重要インスト・バンド、ブッカー・T&ザ・MG’sのメンバーで、コンサート冒頭で演奏したのは彼らがバックを務めたオーティス・レディング「お前をはさない(アイ・キャント・ターン・ユー・ルース)」のイントロである。
ウィリー・ホールはバーケイズのドラマーで、トム・マローンはフランク・ザッパやブラッド・スウェット・アンド・ティアーズとも共演した腕利きのトロンボーン奏者。
マット・ギター・マーフィーは、ハウリン・ウルフやボビー・ブランド、ジュニア・パーカー、メンフィス・スリムとの共演や、ファンク期のジェームズ・コットン・バンド等で知られる名ギタリスト。



なお、ジェームズ・ブラウンの教会シーンで聖歌隊の一員として出演しているチャカ・カーンや「監獄ロック」で踊り出すジョー・ウォルシュ(ジェイムス・ギャング、イーグルス)に気づく人は、立派な音楽オタクだろう。
ちなみに、プロモーターのスラインを演じたスティーブ・ローレンスは、「恋はボサノバ」で有名なイーディ・ゴーメの夫でスティーブ・アンド・イーディでも活躍した歌手兼俳優である。

とまあ音楽トリビアも満載な本作だが、僕が一番笑ってしまうのは、レイ・チャールズがブルース・ブラザースのコンサート・ポスターを店の壁に逆さまに貼ってしまうシーンである。

本作は、アメリカの笑いと音楽の最も幸せなコラボレーションが堪能できるエンターテインメント大作。
マニアックな音楽的知識などなくても、十分に楽しめるバカバカしくも痛快な一本である。


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