2016年9月23日、池袋Absolute BlueでQUOLOFUNE – 黒船+1のライブを観た。僕が山田あずささんと中島さち子さんのプレイを聴くのは、4月22日の緋牡丹(仮)以来のことである。
QUOLOFUNE – 黒船:山田あずさ(vib)、中島さち子(pf)、相川瞳(perc)、Guest:小林真理子(b)
では、この日の感想を。
第一部
1.裏山の。(中島さち子)
どこまでも澄み渡る透明度高き湖のようなピアノの旋律、揺らめく水面の斑紋を思わせるヴィブラフォン、純然たる和の響きを持ったパーカッション。
静謐なイントロダクションから次第に音圧を上げていく四人のアンサンブルには、雅やかな格調高さを感じる。
ベースがやや饒舌になると、サウンドはファンキーなたたずまいに。ラストは、重厚なドラマティックさで。
2.HELIOS(山田あずさ)
幻想的なヴィブラフォンの和音のイントロにシャープなパーカッションが加わり、ピアノとベースが入ってくるとサウンドはスリリングに疾走を始める。まるで、燃え盛る蒼い炎の如くクールでホットなグルーヴ。
どんどん音がラウドになり、プレイはアグレッシヴに。やがて、徐々にクールダウンしてフィニッシュ。
3.Bloom(中島さち子)
重心の低いピアノ、ベース、ヴィブラフォンのユニゾン、幾何学的な音像を感じさせるややアブストラクトでストレンジなアンサンブル。四人がニコニコしながら演奏する様が印象的である。
4.CRYSTAL SILENCE(Chick Corea)
独ECMレーベル屈指の名盤の一枚、チック・コリアとゲイリー・バートンによるデュオ・アルバムの表題曲。
ヴィブラフォンとピアノによる透徹した演奏は、まさしく水晶の静寂そのものである。寄り添うようにベースとパーカッションがそっと加わると、ガラス細工のように繊細なサウンドスケープが会場を包み込む。
地に足がついた感じのどっしりした演奏に表情を変える後半、ラストはエレガントに奏でられるヴィブラフォン・ソロ。
5.AVERAGE(山田あずさ)
カッチリした硬質なアンサンブル、腰の据わったベース・ラインと煽り立てるようにアグレッシヴなヴィブラフォン、まるで小動物が走り回るようなピアノの旋律とパーカッションのビート。
くるくると目まぐるしく表情を変える演奏が、スリリングだ。
第二部
6.山越え(中島さち子)
抒情的で美しいピアノ、軽やかなヴィブラフォン、サウンドのボトムを支えるベースとパーカッション。ストイックなアンサンブルは、次第にスピリチュアルな熱を帯びていく。
とても胸に響く演奏である。
7.光(中島さち子)
スペイシーな広がりを感じさせる四人の音楽的対話。ピアノのメロディがエモーショナルな高揚に表情を変えると、ドラマティックに視界が開ける。
音が、ステップを踏んで進んでいくようなしなやかさ。まさしく、光差すようなプレイに心も弾む。
8.37℃(山田あずさ)
ピアノ、ベース、ヴィブラフォンのユニゾンで切り込んでくる冒頭は、ややエスニックなテイストのユニークなビート。すべての楽器がパーカッシヴな演奏を聴かせ、大地に根差したようなサウンドが響く。
夜気を運んでくるようなピアノ・プレイ、骨太にグルーヴするベース、シャープなリズムを叩き出すパーカッション、クールでクレバーなヴィブラフォン。スタイリッシュな演奏。
9.Naadam(林栄一)
渋さ知らズ所縁のメンバーがいれば、やはり最後はこの名曲。流麗でグルーヴィーなヴィブラフォン、ファンキーなビートを刻むベースとパーカッション。最高にクール&ホットでエキサイティングな演奏。自然に聴く側も身体が揺れ始める。
メンバー一丸となって疾走する様は、とてもスリリングだ。ピアノとパーカッションによるエキゾティックでソウルフルな掛け合いにしびれる。
再び四人に戻ると、ひたすら突き進んでいくような圧倒的ダイナミズムがたまらない。発火するような熱いプレイである。
-encore-
10. Sárgul már a fügefa levele(ハンガリー民謡)
エキゾティックなパーカッション・ソロから入る演奏は、夜のしじまにそっと入り込んでくる優しく静かな美しい調べ。ここではない何処か…とでもいうような、不思議な郷愁に心がざわめいた。
女性四人による演奏は、このメンバーならではのオリジナリティを感じさせる楽さだった。
ちょっと天然さが覗く山田さんのMCは聞いていてくすっと笑ってしまうんだけど、いざ演奏になるとビシッと決まるから流石である。
ちょっと贅沢な時間を過ごせた、週末の夜だった。
メンバーの皆さん、お疲れ様でした。