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緋牡丹ず 2016.10.15@国立NO TRUNKS

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2016年10月15日、国立NO TRUNKSで緋牡丹ずのライブを観た。

 

 

もそも、緋牡丹ずは渋さ女子部として企画されたライブが不破大輔さんのダブル・ブッキングにより、急遽ベースをかわいしのぶさんが代演したことから偶発的にできた女性カルテットである。わりと困った理由である。
その4月22日のライブが好評だったので、正式に「緋牡丹ず」として二回目のライブが企画された。命名は、NO TRUNKSのマスター村上寛さんである。
なお、四人が持ち寄った曲をジャンケンで勝った順に演奏するという緩いノリは、今回も同様である。

緋牡丹ず:纐纈雅代(as)、中島さち子(pf)、山田あずさ(vib)、かわいしのぶ(eb)


では、この日の感想を。

第一部

1.ひめごと(かわいしのぶ)
ちょっと人を食ったような、コミカルでとぼけた歌。突然、かわいからソロを振られて戸惑う纐纈が微笑ましい…のだけど、そこからスウィンぎーに吹くのは流石だ。
キュートな演奏である。

 


2. Bloom(中島さち子)
重心の低いベース・ライン、軽やかなヴィブラフォン、ややノイジーなピアノとフリーキーなサックス。ちょっとアブストラクトで、スリリングな音像。各人が異なるベクトルで演奏しているようで、ギリギリのラインで破綻しないタイト・ロープの如きアンサンブル
ヴィブラフォンのアグレッシヴなプレイをうかがいつつ音を合わせるピアノ、淡々と自分のラインを饒舌に弾くベース、アタックの強い演奏から、ドラマティックなピアノ・ソロへ。
再び四人に戻ると、フリーキーなユニゾンをバッチリ決めて終演。

 


3.夜の緋牡丹ず(フリー・インプロ)
「今夜は一曲しか持ってこなかったから第一部ではインプロをやりますが、旅っぽいのと蟻地獄のような酒と闇…みたいの、どっちかいいですか?」という纐纈の言葉に、お客が選んだのは後者(笑)
まるでエリック・ドルフィーのようにいななくサックスに導かれて、エキセントリックな音を奏でるメンバー。闇すら破壊するようなヴァイオレントなフリー・インプロビゼーション。
激しいプレイの応酬から、嵐が去った後のように訪れる静寂が美しい。

 


4.Menuet~Petite suiteより(Claude Debussy)
山田が用意したのは、ドビュッシーの「メヌエット」をアレンジした楽曲。ハッとするような透明感と哀愁漂う感傷的な美しいメロディ、秋の夜にそっと忍び込むような心洗われる室内楽的アンサンブル。蟻地獄的な女の闇の世界から一転、NO TRUNKSがセレブリティなサロンに
徐々に音が力強さを増し、サックスのブルージーなフレーズとヴィブラフォンのソウルフルな旋律。ドビュッシーのメロディが、極めて日本的なマイナー調のサウンドに再構築される面白さ。

 


第二部

5.共存のブルース(かわいしのぶ)
やはり、コミカルな歌に始まり、ヴィブラフォンのキュートなメロディと明るく歯切れのいいピアノ、アーシーなサックスが絡む小品である。

 


6. 37℃(山田あずさ)
日本昔話を想起させるような和風の旋律、低音を強調したアンサンブルで進み、次にブルージーなサックスが力強くブロウされ、そこにアタックの強いピアノと骨太なベース・ライン、クリスタルなヴィブラフォンが重なる。どこか演歌的なウェットさとソウルフルな拳回しを感じる。
パーカッシヴに切り込むヴィブラフォンの攻撃的なプレイから、ゴスペル・ライクに響くピアノ。とてもポジティヴなサウンドに、心震える。
まさに、スピリチュアル!

 


7.カラスの結婚式(纐纈雅代)
ブルージーでエキゾティックなメロディを持った纐纈ファンにはお馴染みの曲である。緋牡丹ずによる演奏は、独特のエレガントさとリリシズム、それに逞しさも伴った素晴らしいものだった。

 


8.一摘みの祈り(中島さち子)
繊細で美しいクリスタルな響きを共鳴するピアノとヴィブラフォンによるイントロダクション。祈りのタイトルそのままに、ブライトな敬虔さを感じさせるサックスのメロディ。
過剰さを排したストイックなプレイだからこそ、この曲に込められた想いが聴く者の胸を打つ。
長くつらい夜の後、ようやく迎えられた新しい陽の出のようなさわやかさが感動的である。

 


-encore-

かわいの「闇で終わります…」の一言で始まった演奏は、ひたすらアグレッシヴに叩き付けられる女性四人の内的な闇であった。
不協和音寸前の不穏でアブストラクトな音は、さながら不眠症的フリー・ジャズとでも称したくなるようなヒリヒリした危うさだ。


 

前回のライブは、当人たちも含めて何が飛び出すか分からないスリリングさと時々のぞくユーモラスな雰囲気が楽しかったが、今回はある種の確信となって演奏が展開していたように思う。
「この四人ならでは」というキャラクターが音の輪郭を形作っていたし、これからも定期的に続けてほしい女性カルテットである。
メンバーの皆さん、お疲れ様でした。


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