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NAADA「NAADA HOUSEへようこそ vol.1」2016.11.5@スタジオ・アンダン

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2016年11月5日、田端にある音楽レンタルスペースStudio AndantinoでNAADA初のワンマン「NAADA HOUSEへようこそ vol.1」を見た。
今年、NAADAがライブをやるのは8月27日の下北沢Laguna以来四度目で、僕が彼らのライブを観るのはこれが通算46回目。
いつもだと曲ごとの演奏内容に触れたレビューを書いているんだけど、上述したように今回は初ワンマン記念ということで、いつもとはちょっと違った感じで書こうと思う。「NAADAと僕と音楽と」風に、ささやかなるクロニクル的な文章を。
 

NAADA : RECO(vo)、MATSUBO(ag)、COARI(pf)

以前にも書いたことがあるけど、僕がNAADAの存在を知ったのは偶然だった。
今を遡ること8年前、2008年12月16日に池袋のライブハウス鈴ん小屋で開催された音楽イベント「plumusic Christmas」で友人のベリーダンサーが踊るというので足を運んだ。今は対バン形式のライブがあってもほぼお目当てのバンドしか聴かない僕だが、当時は持て余すほどに時間があったから律儀に全出演者の演奏を聴いていた。そして、よかった演奏者には積極的に声を掛けたりもしていた。
今思えば、随分と元気で行動的だったんだな、自分…と半ば感心、半ば呆れつつ回想してしまうけれど、この時声をかけたのがNAADAのRECOちゃんだった。その日の演奏は、5人のフルバンド編成であった。

 

当時のレビューを読み返してみると、「NAADAは、ボーカルの女性にキュートなキャラクターと豊かな表現力があり、メロディもキャッチーで安心して聴くことができた」と書いている。あと、「ギターに華がない」とか書いてるな。すまん、マツボ!(笑)
僕の記憶が確かならばこの日の鈴ん小屋は音響が悪く、特にNAADAのライブ前半は音がめちゃくちゃ歪みまくっていた。にもかかわらず、彼らの曲が持っているポップな魅力はちゃんと聴き取ることができた。

それからしばらくが経った2009年4月30日、今度はサポートなしの二人だけによるNAADAの演奏を代官山NOMADに聴きに行った。この時のイベント名はNOMAD Presents「音楽曜日 Vol.5」。
以来、コンスタントにNAADAのライブに足を運んで今日に至っている。僕は重度の音楽オタクを自覚しているけど、彼らは僕が愛してやまない極めて重要なミュージシャンである。
以前、「NAADA~裸足の天使が舞い降りる場所」と題してNAADAの音楽的魅力について書いた文章を紹介しておこう。

2011年9月に、一度だけ演奏時間60分のツーマン・ライブをやったことがあった。レパートリーも十分にあるし、尺の長いライブでこそNAADAが持っている音楽的な多面性と魅力がもっと発揮できるはずだと僕はずっと勝手に思い続けていたのだが、待ち望んでいたワンマンはなかなか行われなかった。多分、彼らにとっての“その時期”はまだ到来していなかったのだろう。
ちなみに、ツーマンの時にサポート・メンバーとしてNAADAとともにステージに立っていたのがCOARIだった。

そして、今年はNAADAにとって大きなターニング・ポイントとなった。アルバム『muule』を全国流通にのせ、You Tube上で週一回カバー動画を発表するNAADAchannelをスタートして、彼らの重要なサポート・メンバーだったCOARIを正式メンバーに迎えたのだ。
とりわけ、NAADAchannnelのインパクトは大きく、彼らの音楽はこれまでとは桁違いの数の人々に届くようになり、彼らのファンは着実に増え続けている。
これは、NAADAの音楽を愛聴し続けている僕がずっと望んでいたことであり、いちロートル・ファンとしてはうれしい限りである。

 

で、言葉通り「期は熟した」ということなのだろう。本当に待望のワンマンが実現した。何から何までNAADAの手作り、あえて会場をライブハウスでなく音楽スタジオにしての三時間。
コンサートは、以下の通り三部で構成された。

PART 1
sunrise
Humming
スマイル

Little Fish
Good bye
echo
fly
I love you
Twill
Guitar Solo

PART 2
You Tube NAADAchannelからセレクトしたカバーをメドレーで

PART 3
愛、希望、海に空
cherish
puzzle
REBORN
RAINBOW

ライブ開始から二曲目くらいまで音響的に不安定な部分もあったけれど、ライティングによる演出もできない環境ながら、彼らの想いの熱さが満ち溢れ、その音楽を熱心に聴き入るオーディエンスが会場を埋め尽くし、終始コンサートは温かくリラックスしたムードに包まれていた。
そう、まさにNAADA HOUSEに集まった気の置けない人々とでもいう風に…。

第二部の時、お客さんから寄せられた質問にメンバーが答える風景が妙に新鮮だった。「ああ、確実にNAADAは新しいファンを獲得しているのだな」と思った訳だ。
その第二部ではRECOがいかに幅広い表現力を持ったボーカリストなのかということを改めて実感できたのが、個人的には大きな収穫であった。

そして、オリジナル・パートの第一部と第三部について。

沢山の素晴らしい演奏を聴かせてくれたが、僕の個人的な思いをシンプルに書いておこう。
久しぶりに『Triangle2』バージョンで演奏された「fly」としばらくステージ演奏がなかった「cherish」の二曲がとても心に響いた。
現在のライブで一つのハイライトとなっている「fly」は僕の大好きな曲だけど、静かなイントロから始まるこのバージョンはしばらくご無沙汰だったのだ。
そして、「cherish」は数年前までピアノが加わった編成でのハイライトとなるエモーショナルなバラードだったから、久しぶりにこの曲を熱唱するRECOの姿に胸が熱くなってしまった。何というか、僕がNAADAを聴き始めたころのことが色々と思い出されて。

この日のライブでもっとも僕の心を貫いた珠玉の一曲、それは「Twill」だった。極めて個人的なことを言うと、今年は色々としんどいことが続いて心身ともかなり疲弊しているのだけれど、この曲を聴いているうちに自分がとても励まされているような気持ちになった。
もし、音楽に某かの力があるとするならば、この日に演奏された「Twill」は正真正銘の音楽的な力に他ならないと思う。
ヒーリングという言葉はともすれば安っぽく聞こえるけれど、この日の「Twill」が僕にもたらしたものは、癒しなんかではなくもっと根源的なパワーだった。

風邪が治りきっていない体を押して会場にやって来た僕は、終演後にメンバーと言葉を交わすことなくすぐ会場を後にしてしまった。
けれど、帰りは心も体もちょっと元気になっていた。
冬の近づいた外の空気は風邪が抜けない身には冷たいものだったけれど、耳に残るNAADAの音楽は、僕の心を温めてくれたのだ。

そんな、一日だった。

 


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