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NAADAワンマン・イベント2018.12.8@西新宿GARBA HALL

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2018年12月8日、西新宿GARBA HALLでNAADAのワンマン・イベントを観た。
本来は、彼ら三度目のワンマン・ライブ「NAADA HOUSEへようこそ vol.3」として準備が進められていたのだが、メンバーのCOARIが深刻な体調不良によりピアノを演奏することが極めて困難な状況に陥ってしまったため、当初の企画をいったん白紙に戻したうえで、イベントという位置づけで再構築して開催された。言うまでもなくCOARIがピアノを弾くことはなく、彼女はコーラス等での参加となった。
よって、入場料は無料のフリー・ライブ、投げ銭制というスタイルに変更された。会場にライブが行われていることを告知するようなポスターの掲示は一切なく、入口に人が近づくたびにスタッフがドアを開けて迎い入れるという徹底ぶりだった。この辺りの姿勢にも、メンバーの生真面目で真摯な姿勢が表れていると思う。

ちなみに、僕が彼らのライブを観たのは前年10月21日の西新宿GARBA HALL「NAADA HOUSEへようこそ vol.2」以来、この日が通算49回目。

NAADA : RECO(vo)、MATSUBO(ag)、COARI(chorus,MC)+MITSURU(b)

クソ野郎★ALL STARS「新しい詩」のカバーでスタートした第一部は、いつものようなシリアスさとはちょっとテイストを異にしたリラックスした演奏が展開された。久しぶりにサポート・メンバーとして加わったMITSURUのグルーヴするウッド・ベースが絶妙なスウィング感を醸し出し、華やかさと楽しさがあって、あえて「イベント」と冠したメンバーの思いが、一曲目から強い意志となってオーディエンスである僕らに伝わってきた。
演奏されるどの曲もしっかりしたクオリティが保証されているのだが、「皆さん、肩の力を抜いてできるだけ気楽に楽しんでくださいね♪」というムードを前面に出したプレイということである。
そして、グランドピアノの前に座りコーラスや鳴り物で参加しているCOARIに対するくすぐりやツッコミも忘れない。この辺りのメンバー間のやり取りも、信頼関係に裏打ちされたユーモアを感じさせて微笑ましい。
そんな第一部で一番のお遊びは、井上陽水と安全地帯「夏の終わりのハーモニー」のカバーである。MATSUBOにはギターを弾かせずスタンドマイクでCOARIとハモらせ、おまけにギター演奏はリハーサルなしでMITSURUに担当させるという無茶振りである。当然のことながら、かなりよれよれな感じの演奏が展開した訳だが、最後はRECOにボーカルを取らせることできっちりフィニッシュした。この曲だけは、終始会場から笑いが漏れていた。

MTSUBOとMITSURUによるデュオ(本来は、COARIもピアノを弾くはずだった)で演奏されたインストゥルメンタル「SPAIN」が、個人的には出色だった。基本的に、MATSUBOはコード・ストロークとアルペジオをメインに演奏するギタリストで、ソロを演奏することもほぼない人である。その彼が、「SPAIN」で聴かせてくれたシングル・トーンが実に刺激的だった。MITSURUと二人だけで奏でられた引き締まった音像は、ドイツの名門レーベルECMの音を想起させるもので、僕は聴いていてパット・メセニーのトーンに近いものを感じて興奮してしまった。

第二部は、COARIが全面的に構成とMC、効果音を担当したパートだった。演出的にはNHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」のパロディーで、彼女と二人組だったころのNAADAの出会いと当時の彼らの演奏を再現するというもの。ナレーションのなりきり方からテーマ曲の再現性までなかなかの健闘ぶりで、思わず笑ってしまう個所もあった。敢闘賞ものの出来である。
個人的なことを言うと、僕はNAADAのライブを10年にわたって聴き続けているから、COARIがナレーションで語るライブをほぼすべて観ている。だから、当時彼らが出演していた代官山NOMADO、新宿LIVEたかのや、新宿SACT!、浅草KURAWOODといったライブハウスの光景や会場内の空気感までが思い出されて、RECOとMATSUBOの二人だけで演奏される音楽的純度の高い「Humming」「Good morning」「echo」「RAINBOW」を聴いていたらついつい感傷的な気持ちになってしまった。
あと、静かなギターのイントロから入ってぐんぐん上昇気流に乗って行くようなアレンジの「fly」が久しぶりに聴けたのも大きな収穫だった。僕は、このアレンジが大好きなのだ。
そして、このパートのラストは「スタートライン」を斬新なアレンジで演奏。こういう曲で締めくくるところに、ノスタルジーだけでは終わらせないというメンバーの気概を感じる。

そして、第三部では彼ららしい自然体の演奏を聴かせてくれたのだが、アンコールにこの日一番のサプライズが用意されていた。彼らのレパートリーの中でも一際印象深い名曲「sunrise」が、COARIのピアノも加わってプレイされたのだ。
これ以上のエンディングがあるだろうか。悪い訳がないではないか!心に染みわたる素晴らしさだった。

イベントという位置づけではあったが、2時間半を超える演奏はライブと名乗っても何の遜色もないとても充実したものだった。
ある種の懐かしさも込み上げてしまい、僕にしては珍しく終演後に長い時間メンバーの三人とサポートのMITSURU、そしてスタッフのうっちーと話し込んでしまい、気が付けば会場に残っているお客は自分だけになっていた(苦笑)
とにもかくにも、僕にとっては本当にスペシャルな時間だった。それと同時に、「あぁ、僕は10年間NAADAの演奏を聴き続けてきたんだなぁ…」という確かな手応えのようなものが胸を満たした。


メンバーの皆さん、本当にお疲れ様でした!
そして、COARIちゃんにまた思う存分ピアノをプレイできる日々が一日も早く訪れますように…。


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