書かないうちにずるずると時間が過ぎてお盆になっちゃったけど、再発CDアワードということで去年一年間のCD再発市場を振り返ってみたい。
CDが売れなくなって久しいが、まだ何とかメディアとしては生き残っている…そんな印象を持ってしまう昨今で、近年の再発事情は名盤の何十周年を記念したスーパー・デラックス・エディションや過去の作品すべてをBOX化した廉価盤が目立つようになってきた。言ってみれば遺産のアーカイヴ作業が進んでいるという感じだが、さすがに新鮮味はない。
そんな2018年の再発シーンにおいて、僕が個人的にうれしかったものを順不動で挙げておく。
○ THE JAMES COTTON BAND / BUDDAH BLUES
ずっと再発が待たれていたブッダ・レコード時代の『LIVE & ON THE MOVE』(1976)、『HIGH ENERGY』(1975)、『100% COTTON』(1974)を3枚組にまとめた再発。
ジェームズ・コットンのブルース・ハープが煽りまくるノリノリのファンキー・ブルースを心行くまで堪能できる逸品だ。
○ シリア・ポール / 夢で逢えたらVOX
20周年盤が入手困難となり、早20年。今回の40周年盤はまさしく決定版というに相応しい大ボリュームだ。2LP+2EP+4CDという完全限定盤もリリースされたが、ここでは2枚組の通常盤を紹介したい。それでも、オリジナルのリマスターにシングル・バージョンをボーナス・トラックにつけて、2枚目には初期ミックスと1977年のナイアガラ・ツアーのライブを収録してある。
大滝詠一が、文字通り孤軍奮闘したナイアガラ版ウォール・オブ・サウンドは、いつまでもその輝きを失わない。これこそ、普遍的なポップ・ミュージックである。
○ FRANK ZAPPA / THE ROXY PERFORMANCE
次から次へと蔵出しリリースを続けるザッパ・ファミリー・トラストのザッパ・レコーズ。今回は、名盤ライブ『ROXY & ELSEWHERE』(1974)や、『ROXY THE MOVIE』(2015)、『ROXY BY PROXY』(2017)の元ソースである1973年12月9、10日にLAロキシー・シアターで行われた全公演を7枚組BOXとしてリリースした。
ナポレオン・マーフィー・ブロック、ジョージ・デューク、チェスター・トンプソン、ラルフ・ハンフリー、トム・ファウラー、ブルース・ファウラー、ルース・アンダーウッドという強力メンバーをそろえた最高のパフォーマンスを、浴びるように聴いてほしい。
○ COLORED MUSIC / INDIVIDUAL BEAUTY
藤本敦夫と橋本一子のユニットであるカラード・ミュージックは、1981年に唯一のアルバム『COLORED MUSIC』を出しただけだが、何と未発表の音源が登場した。内容は、カセットブックとして発売予定だった5曲に6曲追加した全11曲。1ST収録「HEARTBEAT」の別バージョンや、橋本一子のソロ・アルバム『BEAUTY』(1985)収録曲のオリジナル・バージョン3曲を含む。
『COLORED MUSIC』がフューチャー・ジャズあるいはコズミック・フュージョンだったとすれば、このアルバムはニュー・ウェーヴのフィルターを通したエスニック・ミュージックのような印象を受ける。とにもかくにも、歓迎したい発掘音源である。
○ G.T. MOORE / THE HARRY J SESSIONS
木漏れ日フォーク・バンドと称されたHERON、いち早くレゲエを取り上げたG.T. MOORE & THE REGGAE GUITARSのG.T. MOOREが、1980年に録音していた驚きの音源。キングストンの名門レーベルであるHARRY Jに残したZAPPOWをバックに演奏した作品は、彼のソングライティング・センスが光るクール&メロウなレゲエとダブの宝庫。
まさに、ソフィスティケーションの極みといった美しいサウンドに聴き惚れてしまう。
○ LAKESIDE / SHOT OF LOVE・ROUGH RIDERS・FANTASTIC VOYAGE
オハイオ州デイトンの大型ファンク・グループとして一世を風靡したレイクサイドのソーラー・レコード作品をまとめて聴けるお得盤。1977年に出したメジャー第一作が不発に終わった彼らは、ソーラーに移籍すると『SHOT OF LOVE』(1978)、『ROUGH RIDERS』(1979)、『FANTASTIC VOYAGE』(1980)を立て続けにヒットさせた。
とにかく、歯切れのいいファンク・チューンとメロウなバラードが彼らの真骨頂だ。
○ INOYAMALAND / DAVZINDAN-POJIDON
1983年に細野晴臣と高橋幸宏の¥ENレーベルからリリースされた作品で、ずっと入手困難だったため待望の再発である。しかも、オリジナルマルチトラックからのリマスタリングという理想的な形態。
本格的な環境音楽であり、今でいうところのヒーリング・ミュージックの草分け的な一枚。ExT Recordingsからその他の作品も続々とリリースされているので、要チェックだ。
○ HOLGER CZUKAY , JAH WOBBLE , JAKI LIEBEZEIT / FULL CIRCLE
ホルガー・シューカイ関連の作品で、ずっと再発されていなかった1982年の本作(当時の邦題は『舟海』)が、ようやくリマスターでリリースされた。
CANとP.I.L.の先鋭的な音響感覚をベースに、あえて音数を削ぎ落として構築されたサウンドは、ひんやりとしたソリッドさと不思議な浮遊感が同居している。感触としては、ホルガー・シューカイのソロ・アルバムの延長線上の音だが、それは3人のコラボレーションをシューカイがアルバムにまとめ上げたからだろう。いずれにしても、ホルガー・シューカイの作品としては絶対に外せない傑作である。
○ KATE BUSH / REMASTERED PART Ⅰ
長らくリマスター再発が待たれていたイギリスを代表するワン・アンド・オンリーなヴォーカリストであるケイト・ブッシュ初のリマスターBOXで、PART Ⅱも同時リリースされた。もちろん、アルバム単体でのリリースもある。彼女自身が監修していることも、理想的である。このBOXでは、デビュー作『THE KICK INSIDE』(1977)から『THE RED SHOES』(1993)までの7枚が収められている。
とにかく、高音から低音まで自由自在に自分の声を操り、彼女ならではの世界観を表現した作品群は、強靭なオリジナリティーに満ち溢れた素晴らしい内容である。
○ THE BOBBY FULLER FOUR / MAGIC TOUCH
ザ・クラッシュがカバーしたことでも有名な「I FOUGHT THE LAW」のオリジネーターであるボビー・フラー・フォーが、マスタングに録音した6枚のシングルと彼らの前身グループの楽曲、それに加えて謎の急逝を遂げたボビー・フラーに代わり弟のランディー・フラーが率いたランディー・フラー・フォーのシングル等も加えた決定盤。すべてオリジナルのモノ・ミックスなのもうれしい。
彼らの痛快極まりないガレージ・サウンドは、まさに60年代ロックンロールの輝きに満ちている。
2019年再発で僕が期待しているのは、¥ENレーベルのインテリア『インテリア』やテストパターン『アプレ・ミディ』、去年も書いた生活向上委員会大管弦楽団『This is Music is This!?』『ダンス・ダンス・ダンス』、プリンス、バーブラ・ストライサンドのリマスター、バーバラ・ムーアといったところである。
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My Favorite Reissured CD Award 2018
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