2014年4月2日、阿佐ヶ谷Yellow Visionでグンジョーガクレヨン企画のライヴ「ぽこりんちゃん」を観た。
グンジョーガクレヨンの組原正さんが女装をしていて、そのキャラクターがどうやら“ぽこりんちゃん”みたいだ。
グンジョーガクレヨン:組原正(g,vo)、前田隆(b)、宮川篤(ds)
グンジョーガクレヨンといえば、Pass recordから1980年にリリースされた『GUNJOGACRAYON』の無機質なメタリックさとパーカッシヴな肉体性が共存した音が僕は好きだった。1987年にDIWレコードから出た2ndアルバムも持っている。
現在のグンジョーガクレヨンは三人編成だが、いずれも結成当初からのメンバーである。
電子変調された組原のヴォイス、かきならされるノイジーなテレキャスター、ストイックにボトムを支える前田のベース、宮川のタイトなドラム。
ただ、客席で聴いているといささか音がくぐもっており、何やら団子状に響く。とりわけ、ドラムの音の抜けが悪い。そのせいか、悪くはないのだが演奏自体が単調な気がした。
あと、組原の女装が僕にはどうにもしっくりこない。スリー・ピースでこれだけフィジカルな演奏を披露しているのだから、何も異形な演出など無用に感じる。
如何せん僕は女装的なインパクトなら成人映画館等ですっかり耐性ができているから、ちょっとやそっとのことでは異形とすら感じないのである。
その意味でも、少し物足りなさを感じたパフォーマンスであった。
日野繭子、向島ゆり子、組原正・トリオ:日野繭子(electronics)、向島ゆり子(e.violin)、組原正(g,vo)
この日の共演者である日野繭子は、元C.C.C.C.で、現在はDFH-M3とTRANSPARENTZで活動中。言わずと知れた、かつてのピンク映画界を代表するスター女優でもあった。
向島ゆり子は、PUNGOやベツニナンモクレズマでプレイした人。スウェーデンのサムラ・マンマス・マンナのリーダーだった故・ラーシュ・ホルメルとのDUOアルバムも発表している。
向島のアグレッシヴなエレクトリック・ヴァイオリンが空間を切り裂き、そこに組原の攻撃的なギターと日野の電子ノイズが被せられる。音のコラボレーションとしてはなかなかに刺激的だし、中でも向島のメロディと扇情を行き来するヴァイオリンの調べは魅力的である。
ところが、トータルとしての音像にはいささか求心力が欠けていたように思う。三人が目指すサウンドの核が、いつまで経っても見えてこないのだ。互いの音を探ってはいるものの、ダイナミズムも偶発的なカオスも生じないままにただ演奏が進んでしまったように映った。
一度音が止んでから再びノイズに戻って演奏が終わるのだが、このブレイクがメリハリにならず、その後に続けられた演奏がややもするとキレの悪さに繋がりかねない展開だった。
グンジョーガクレヨンとの差別化を図る上でも、組原が衣裳くらいはチェンジして女性三人(女装含む)の異形ノイズ・ユニット的なコンセプトでパフォーマンスを構築すべきだったように思う。
僕の個人的な音楽嗜好を言わせて頂ければ、このメンバーならDUB NOISE的な展開を期待したかったところである。
このユニットにはまだまだ可能性があると思うから、是非次を期待したいものである。