6月25日、東新宿のライブハウス真昼の月・夜の太陽でNAADAが出演するライブ・イベント「夜風に花を咲かせる」を観た。
僕がNAADAのライブを観るのは、これが35回目。前回観たのは3月21日 、場所は同じ真昼の月・夜の太陽だった。
彼らにとって今年2度目のライブは、3年ぶりニュー・アルバム『muule』のリリース・デーでもあった。
僕がNAADAのライブを観るのは、これが35回目。前回観たのは3月21日 、場所は同じ真昼の月・夜の太陽だった。
彼らにとって今年2度目のライブは、3年ぶりニュー・アルバム『muule』のリリース・デーでもあった。
NAADA:RECO(vo,bodhrán)、MATSUBO(ag)
では、この日の感想を。今回演奏された5曲は、すべて『muule』収録曲である。
1.overlook
レコ発らしく、『muule』1曲目に収録された曲でスタート。この日は、サポート・メンバーがいないNAADA二人だけの演奏だが、PC音源に関しては、かなり考えて音を作り込んでいるように感じた。
二人での演奏の場合、僕は最小限の音数でイマジネーション豊かに表現してみせるところが魅力だと思うのだが、この演奏においてはいささか音を畳みかけ過ぎているように感じた。何というか、やや息苦しい単調さがあったのではないか。
2.君想
出だしのシンプルさに心惹かれるが、途中からエコーやコーラスといった部分にどこか音像的ギミックを意識してしまう。恐らく、PAによる出音がかなりクリアーであることも関係しているのだろう。
3.Little Fish
NAADAのレパートリーでも、この曲くらい演奏アプローチで印象が変わるものも少ないんじゃないかな…と思う。僕がこの曲に抱くイメージというのは、フレンチ・テイストのキュートな小品というものである。
この演奏では、聴いていて音のバランスにやや違和感があった。演奏が進むにつれて情報がどんどん増えて行くような気がして、どこにフォーカスして音と対峙したらいいのかをつかみあぐねているうちに演奏が終わってしまった。
4.愛 希望、海に空
シンプルな演奏なのだけれど、どういう訳かその音像に耳が疲れてしまう。何故だろう…と戸惑いながら聴いていたのだが、後半になって音にハッキリと統一感が見えて来る。その展開は、まるで魔法のようだった。
恐らく、この夜僕が無意識に欲していたNAADAの音はこれだったのだろう。まさに、気持ちが反応したとしか言いようがない視界の開け方だった。
5.僕らの色
この日の白眉と断言できる演奏であった。とにかく、素晴らしい。
四人編成による前回のライブでも、エスニックなテイストを感じさせるいい意味で技巧的な演奏を披露していたが、二人だけで行ったこの日の演奏はとても斬新でチャレンジ精神溢れるアレンジで歌われた。
PCによるパーカッシヴなリズムに前回はアフリカ的なテイストを感じたのだが、今回はむしろアラビックなエキゾティシズムを見た。
音を大胆に削ぎ落としRECOの歌が剥き出しになるような実験的アレンジはとても刺激的だったし、如何に彼女のヴォーカルがハートフルでスキルの高いものなのかを改めて痛感した。
演奏の後半では、マツボがかき鳴らすギターと力強さを増して行くRECOの歌声に、この曲のアイデンティティともいえる祝祭的高揚感が見事に表現されていた。
演奏が終わった後に感じるカタルシスは、優れた音楽に出逢えたことの至福としか言いようのないものであった。
多分に僕自身の体調のせいもあったと思うが、この日の演奏は前半と後半でまったく印象の異なるものであった。
音楽というものは(或いは表現というものは)、パフォーマー側・環境・オーディエンス側のコンディションが相互に作用して形作られるものだ…という至極当たり前のことをリアルに再認識した夜でもあった。
ただ、この日の「僕らの色」には、聴き手が置かれた状況くらいでは左右されない音楽的な力がみなぎっていたし、それは間違いなくNAADAにとって一つの大きな成果であったはずだ。
今後しばらく彼らにはライブの予定がないそうだが、次ステージに立つ時どんな音を聴かせてくれるのかが今から楽しみである。
待ち遠しい、本当に。