1978年4月29日公開、増村保造監督『曽根崎心中』。
製作は藤井浩明・木村元保・西村隆平、原作は近松門左衛門、脚本は白坂依志夫・増村保造、撮影は小林節雄、美術は間野重雄、音楽は宇崎竜童、演奏はダウンタウン・ブギウギ・バンド、照明は佐藤勝彦、録音は太田六敏・宮下光威、編集は中静達治、衣裳は万木利昭、結髪は岡本政夫、助監督は近藤明男、製作担当は本間信行、記録は村山慶子、時代考証は林美一。製作は行動社・木村プロ・ATG、配給はATG。
こんな物語である。
時は元録。大阪内本町の醤油商平野屋久右衛門(井川比佐志)の手代・徳兵衛(宇崎竜童)は、堂島新地天満屋の女郎・お初(梶芽衣子)と深い仲になっていた。お初は天満屋の人気女郎であり、一方の徳兵衛は生真面目ではあっても銭を落せる訳のない町人風情。当然のこと、天満屋の主・吉兵衛(木村元)はいい顔をしない。吉兵衛は、事あるごとに深入りせぬようお初をたしなめるが、もはや徳兵衛との逢瀬だけが生きがいのお初は聞く耳など持たない。
久右衛門は徳兵衛の伯父にあたり、彼は徳兵衛の実直さを見込んでいた。久右衛門はいずれ暖簾分けもと考えて、妻の姪・おはると祝言を挙げるよう徳兵衛に言った。
ところが、将来を誓い合ったお初がいるため、徳兵衛は主人の申し出を頑なに断った。これには、久右衛門も恩を徒で返すのかと激怒。ならば、徳兵衛の継母・お才(左幸子)に渡した支度金の銀二貫目を来月七日までに耳を揃えて返せと迫った。それができぬなら、大阪の地から出て行けと。
寝耳に水のことと驚く徳兵衛だったが、とにもかくにもお才から銀二貫目取り戻すべく郷里へと旅立った。
金にがめついお才は散々徳兵衛を親不孝者とののしったが、これで親子の縁は切ると啖呵を切って受け取った銀二貫目を投げつけた。
万事まるく収まったと胸なでおろし江戸に取って帰した徳兵衛の元に、油屋九平次(橋本功)が弱りきった顔で訪ねて来た。博打に大負けして借金を背負い、返せなければ自分の店を売らなければならなくなったから、何とか用立ててくれないかと懇願する九平次。お人好しの徳兵衛は、来月三日の朝までに必ず返せと今しがた取り戻した銀二貫目をそのまま九平次に貸してやった。
九平次は、徳兵衛の目の前で証文をしたためると、押印して差し出すのだった。
その頃、天満屋ではお初を見染めたお大尽からの見受け話が持ち上がっていた。もちろんお初は断ったが、主はこんないい話は二度とないと話しを進めるようお初に迫った。
ところが、期日を過ぎても九平次は借金を返すそぶりさえ見せない。流石に業を煮やした徳兵衛が、九平次に詰め寄る。ところが、九平次は金など借りていないとうそぶくばかりか、この証文は偽物だとのたまった。ここに押された印は先日落したもので、改印届を出している。自分が落とした印を拾得して証文をでっちあげるとは、商人の風上にも置けぬと、九平次は公衆の面前で徳兵衛のことを罵倒した。
徳兵衛は九平次に掴みかかろうとするが、九平次が連れていた町衆たちに袋叩きにあってしまう。
果たして、お初と徳兵衛の運命は…。
実際の事件に材を取った近松門左衛門の道行きものでも特に有名な「曽根崎心中」。
人形浄瑠璃的なドラマツルギーをそのまま実写映画にトレースしたような演出は、まさに「ゲキ×シネ」「シネマ歌舞伎」と称したくなるような佇まいである。矢継ぎ早のテンポでエモーショナルに畳みかけてくる様は、増村保造の真骨頂だろう。
役者陣も、見得でも切るようなオーバー・アクションすれすれの芝居で、近松世話物の世界を再構築してみせる。
艶やかさと凛々しさを併せ持つ梶芽衣子のずば抜けた存在感は本作最大の見所だし、悪役を嬉々として演じる橋本功や銭ゲバ的な左幸子の外連味も捨てがたい。
お初と徳兵衛が曽根崎の森で果てるシーンこそが本作のクライマックスに違いないが、個人的にはその前の場面で独壇場の如き圧倒的な演技を見せる井川比佐志に映画的カタルシスを感じた。
で、個人的に不満だったのが、宇崎竜童の演技ということになってしまう。この役者陣の中で宇崎が健闘しているのは認めるが、映画のリズムを停滞させるような科白回しのキレの悪さがどうにも気になって仕方なかった。
相手役の梶芽衣子が鬼気迫る演技を見せているから、なおさら彼の弱さが露わになるのだ。
本作は、間違いなく梶芽衣子の代表作。 人形浄瑠璃的なドラマツルギーをそのまま実写映画にトレースしたような演出は、まさに「ゲキ×シネ」「シネマ歌舞伎」と称したくなるような佇まいである。矢継ぎ早のテンポでエモーショナルに畳みかけてくる様は、増村保造の真骨頂だろう。
役者陣も、見得でも切るようなオーバー・アクションすれすれの芝居で、近松世話物の世界を再構築してみせる。
艶やかさと凛々しさを併せ持つ梶芽衣子のずば抜けた存在感は本作最大の見所だし、悪役を嬉々として演じる橋本功や銭ゲバ的な左幸子の外連味も捨てがたい。
お初と徳兵衛が曽根崎の森で果てるシーンこそが本作のクライマックスに違いないが、個人的にはその前の場面で独壇場の如き圧倒的な演技を見せる井川比佐志に映画的カタルシスを感じた。
で、個人的に不満だったのが、宇崎竜童の演技ということになってしまう。この役者陣の中で宇崎が健闘しているのは認めるが、映画のリズムを停滞させるような科白回しのキレの悪さがどうにも気になって仕方なかった。
相手役の梶芽衣子が鬼気迫る演技を見せているから、なおさら彼の弱さが露わになるのだ。
ただ、ダウンタウン・ブギウギ・バンドのサウンドほどには前に出て来ない宇崎竜童に、もどかしさを感じてしまう一本でもある。