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リム・カーワイ『FLY ME TO MINAMI 恋するミナミ』

2013年12月14日公開、リム・カーワイ監督『FLY ME TO MINAMI 恋するミナミ』


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企画・製作総指揮は加藤順彦、共同エグゼクティブ・プロデューサーは井原正博・浦勝則・木下勝寿、プロデューサーは椚山英樹・リム・カーワイ、共同プロデューサーは三木裕明、脚本はリム・カーワイ、共同脚本は伊丹あき、人物デザインは柘植伊佐夫、撮影は加藤哲宏、美術は塩川節子、美術助手は上林弥生・地主麻衣子、編集はリム・カーワイ、録音は山下彩、録音助手は濱口雅弘、衣装は碓井章訓、メイクは北川恵里、照明は永田青海、整音は高田伸也、スチールは佐脇卓也、ライン・プロデューサーは友永勇介・船曳真珠、制作は平松明緒・今吉樹弥、制作補佐は松村和篤、助監督は加治屋彰人、監督助手は宮本杜朗。桑田由紀子、音楽はイケガミキヨシ、テーマソングはナガシマトモコ(ORANGE PEKOE)「Fly Me To Minami」。
制作はCinema Drifters、製作・配給はDuckbill Entertainment。
宣伝コピーは「恋は大阪ミナミで交差する」「言葉を越えた二つの恋が大阪ミナミで交差する」
2013年/日本・シンガポール/103分/英語・中国語(広東語)・日本語・韓国語/16:9/ステレオ


こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。

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シェリーン(シェリーン・ウォン)は、香港でファッション誌のエディーターをしている。部数の伸び悩みから編集長は雑誌に付録をつける方針に転換するが、質そのもので勝負すべきだと考えるシェリーンは納得できない。
悶々とするシェリーンに、編集長は年末に取材で日本へ行くよう指示。場所は、大阪の繁華街ミナミだ。シェリーンは気乗りしないまま出張するが、同行するはずだったカメラマンが妻の出産で行けなくなってしまう。

来日したシェリーンは通訳を頼んだナオミ(石村友見)に代わりのカメラマンを探してもらうが、繁忙期の年末故カメラマンは見つからない。そこでナオミは、現在就職活動で行き詰っている弟のタツヤ(小橋賢児)を紹介する。
タツヤはカメラが趣味で、これまでに何度かコンクールに入選していた。彼が将来やりたいと思っていることは、アジア諸国を訪ねて人を写真に収めることだ。
背に腹は代えられないシェリーンは、アマチュア・カメラマンのタツヤに撮影を頼むことに。ナオミの案内で、ミナミにあるショップを取材する三人。
一日の取材が終わり、バーでお互いをねぎらう三人。シェリーンはタツヤの写真をチェックしてみるが、その表情は曇った。しばし考えてから、シェリーンは言った。「タツヤ、悪くはないわ。でも、この際だからハッキリ言わせてもらうと…」。

CAをする傍ら、ソウルでセレクトショップを経営しているソルア(ペク・ソルア)。彼女はショップの仕入れ目的で、度々大阪を訪れている。ミナミのコリアン・タウンで韓国雑貨店を営むシンスケ(竹財輝之助)は、数年前にソウルに語学留学した際ソルアと出逢い二人は恋に落ちた。
シンスケが帰国してからも二人の関係は続いていたが、シンスケには妻子があった。二人は、シンスケの妻・綾子(藤真美穂)の目を盗んではミナミで逢瀬を重ねていた。

今年もクリスマスが近づき、ミナミの街もイルミネーションが煌めき華やいでいる。来日したソルアは、早速シンスケに連絡。一緒に飲んだ後、二人はソルアの宿泊するホテルで親密な時間を過ごすが、そうそうことは上手く運ばない。


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とうとう綾子が二人の関係に気づいてしまう。いや、これまでにも夫に女の影を感じてはいたが、綾子はそれに気づかぬふりをしていただけだった。


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妻とのっぴきならない状況になっても、優柔不断なシンスケはソルアへの思いを断ち切れない。ソルアも彼のことを愛していたが、このまま何処へも辿り着くことのない恋愛に疲れてしまった。
意を決して、ソルアはシンスケに別れを告げた。

取材二日目。タツヤは、前回の取材場所の写真を全部撮り直して来た。その写真を見たシェリーンの表情が、パッと明るくなった。
この日も取材は順調に進み、一日の仕事を終えると三人はバーで飲んだ。タツヤはほとんど英語をしゃべれないが、それでもシェリーンとタツヤは熱心に言葉を交わした。
ナオミは恋人からの呼び出しで、先に帰ってしまう。残された二人は場所を変えて飲んでから、ミナミの街を散歩した。「あなたの夢は?」と問われて、タツヤは「人が好きなんだ。だから、アジア各国を回って人々の写真を撮りたい」と答えた。「じゃあ、私はタツヤが撮った写真を雑誌で紹介するわ」とシェリーンは微笑んだ。いつしか、二人は惹かれ合っていた。
シェリーンを宿泊先のホテルまで送ると、タツヤは帰って行った。部屋で一人になると、シェリーンはタツヤが撮った写真を見返した。

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シェリーンを送った後、駅までやって来たタツヤはすでに終電が終わっていることを知る。行き場所に困ったタツヤがミナミの街中をふらついていると、青年たちにちょっかいを出されて困っている女性を見かけた。見かねてタツヤが中に割って入ると、青年たちは面倒臭そうに散らばって行った。ホッと息をついてから、ソルアはタツヤに礼を言った。
ソルアは、シンスケとの別れを決めた後で時間を持て余し、かといってホテルの部屋に一人いることも寂し過ぎて街へと出た。しかし、異国の街で会うべき人もなく、ただただ途方に暮れて公園で時間を潰していた。その時に、スケボーで遊んでいる青年たちにナンパされたのだった。

成り行き上、二人はまだ開いているバーで飲むことに。ソルアは歩いて行ける距離のホテルに宿を取っており、タツヤの乗るべき始発まではまだ随分と時間があった。男と別れて塞ぎ込んでいたこともあって、ソルアは結構な量のアルコールを飲んだ。
そのまま二人はカラオケボックスに場所を移す。ソルアは、しばらくはしゃいでから酔い潰れてしまう。そんな彼女を抱きかかえると、タツヤは何とか彼女を宿泊先のホテルまで連れて行った。そこは、偶然にもシェリーンの泊っているホテルだった。
どうにも寝つけずホテルの1階に下りて来たシェリーンは、酔っ払いのカップルが倒れ込むようにエレベーターに乗るところに出くわす。扉が閉まる刹那、男の方と目が合うがそれはタツヤだった。シェリーンは、動揺する。
何とかソルアをベッドに寝かしつけると、タツヤはソファで夜明かしした。そして、まだ彼女が眠っているうちに部屋を出た。シェリーンのことを気にしつつ。

ミナミの街にも新年がやって来る。シェリーンは、結局あのホテルの一件以来タツヤに会うことはなかった。一方のタツヤは、ひょんなことから知り合ったソルアのミナミ見物の案内をしてやった。
帰国するため、空港に向かう電車へと乗り込むシェリーンをナオミが見送った。タツヤがホームに駆けつけたのは、ちょうど電車が発車した直後だった。
その車内、偶然にも互いが前後のシートに座っていることをシェリーンもソルアも気づかない。


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香港に戻ったシェリーンは、早速ミナミの特集号の編集に取りかかった。編集長の意向もあり付録つきの号となったが、雑誌の評判は上々で部数も伸びた。

数年後。タツヤ初めての個展が、ミナミの小さな画廊で開かれていた。幾人かのお客に交じって、ソルアが彼の写真を見ている。その横で、彼女に説明するタツヤ。
ソルアと入れ違いで、もう一人の女性が入って来る。シェリーンだった。二人にとっては、随分と久しぶりの再会だった…。

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国際色豊かなスタッフとキャストで制作したシンプルな恋愛映画。本作を一言で表現するなら、そういうことになるだろう。
確かに、リム・カーワイという異邦人或いは文化的他者(ただし、彼は1998年に大阪大学基礎工学部電気工学科を卒業している。)の目を通して描かれた大阪ミナミは、まるでヨーロッパのようなシックさといささかのエキゾティシズムに溢れた街としてスクリーンに映し出される。そのあまりにソフィスティケートされた雰囲気からは、大阪本来の猥雑さは感じられない。道頓堀川沿いに輝くグリコネオンまでもが、お洒落なアドバタイズメントに見えるのである。
それは、なかなかに不思議な感覚だ。

映像的にはそれなりに魅力的な作品だと思うのだが、それに比してあまりにも脚本が浅薄で拙い。それが、本作の抱える深刻な問題である。

たとえば、香港のシェリーン。彼女は、編集者としての理想とビジネスとしての現実の狭間でモチベーションを落とし同僚のカメラマンに弱音を漏らすのだが、そのあまりの蒼さにはどうにも鼻白む。
こういう悩みは、別にクリエイティヴな職業だけに限らずどんな仕事でも不可避的な問題である。仕事に追い詰められて疲弊し、ネガティヴになっているヒロインを表現するエピソードとしては、ちょっとないよな…と思ってしまう。そんな悩みは、僕らのささやかな人生の中に、それこそ嫌というほど転がっているのだ。

あるいは、タツヤが撮った写真。最初の撮影でシェリーンにプロとしてダメ出しされたタツヤが、一念発起して自主的に撮り直したものがいきなり飛躍的なクオリティに仕上がってしまうというのも、あまりにイージーだろう。

それから、ソルアとシンスケの不倫にしても、いい大人の男女がやる恋愛とは思い難い。恋は盲目というけれど、客観的に見たらソルアが都合のいい女扱いされているだけである。
そもそも、彼女がシンスケを深く愛し彼とのリスキーな関係に固執することの切実さが感じられないから、どうにも感情移入できないのだ。

また、男たちから強引にちょっかいを出されてタツヤに助けられた後、見ず知らずのタツヤについて行って飲んだりカラオケしたり…というのも、どうなんだろう。シンスケと別れて孤独に苛まれているのは分かるが、展開としてはせめてワン・クッション置くべきではなかったか。何とも、不自然に感じる。

物語後半、ことあるごとにシェリーンとソルアがニアミス的にすれ違うのだが、どうにも物語としての必然性とドラマ的立体感に欠ける。まさに、“取ってつけたよう”なのだ。

繰り返しになるが、どうにもストーリーテリングの甘さが目につくから、役者陣がそれなりに健闘していても、人物としての魅力にまで昇華しないもどかしさがある。
個人的には、ペク・ソルアはなかなか魅力的だと思うのだが…。

本作は、国際色の豊かさがいささか空回り気味の作品。
いくら映像というケースが綺麗でも、物語という中味が弱ければ映画の魅力は半減してしまうのである。

余談ではあるが、ソルアとシンスケがホテルのベッドを共にするシーンでは、もう少しセクシャリティを演出すべきだと思う。
それと、公式HPとフライヤーのストーリー紹介でシェリーンを「美人編集者」って書くのもどうかと思う。タブロイド紙や男性週刊誌のチープな見出しじゃないんだから…。


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