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My Favorite Reissured CD Award 2013

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今年もやって来た再発CDアワード…ということで、去年一年間のCD再発市場を振り返ってみたい。

再発の状況そのものは、国内外を問わず2012年とあまり変化のないパッケージが多かったように思う。ただ、国内においては廉価によるリマスター再発が加速したのと、BOX物再発に関してはその規模が年々デラックス化の一途をたどっている感が否めず、正直ここまで重箱の隅をほじくり返すアウトテイクの収録は却って聴く側にとっては煩わしいのでは…という気もする。研究者にとっては、いいのだろうが。
まあ、その意味では最近デラックス・エディションと二枚組通常エディションを同時再発するケースも増えてはいるが。

次に、目を引いた再発シリーズについて言及すると…。

ソニーのBlue-spec CD2シリーズ、リマスターで帰って来た名企画のワーナー新・シリーズ名盤探検隊2013、同CBGB40周年記念ニューヨーク・パンク紙ジャケット・シリーズ、同 ブリティッシュ・ビート50周年紙ジャケット・コレクション、クリンクのMALACO SOUL MASTERPIECE紙ジャケット・コレクション、ユニバーサルのUniversal Fusion Breeze SHM-CDコレクション、同 ユニバーサル・ジャズ&ボサノバ名盤ベスト&モア、同 MASTERS OF POP BEST COLLECTION 1000、同 MOTOWN R&B BEST COLLECTION 1000、同 CHESS BEST COLLECTION 1000シリーズ、Think!のthree blind mice紙ジャケ/Blue-spec CD復刻シリーズ、同 PEROLAS BRASILEIRASシリーズ、ウルトラ・ヴァイヴのアーバン・フォークの源流シリーズ、同Tabu Records Original Collection(Tabuについては、アメリカでもシリーズ再発がスタート)、同 BRUNSWICK FAVORITE COLLECTION、コロムビアのDig Deep Columbia 70年代日本のロック名盤編、キングのベルウッド・レーベル創立40周年再発企画シリーズ。

去年から続くものとしては、ワーナーのアトランティックR&Bベスト・コレクション1000シリーズ2013とJAZZ BESTコレクション1000シリーズ、レーベルをまたいでの昭和ジャズ復刻シリーズやDig Deep ColumbiaとDEEP JAZZ REALITYのコラボ、ウルトラ・ヴァイヴのサルソウル・レコーズ・オリジナル・アルバムズ・ベスト・セレクションズとホット・ワックス/インヴィクタス・グレイテスト・コレクション、ユニバーサル・ミュージックのモータウンモータウン名盤紙ジャケ/SHM-CDシリーズ、クリンクのTK’s Mellow Treasures紙ジャケット・シリーズ。

その一方で、海外の老舗レーベル、RHINOやHip-O Select、SUNDAZEDは随分と大人しくなってしまった。
マニアから熱烈な支持を受けたRHINO HANDMADEもここ数年は、ワーナー・ミュージク・ジャパンの通販サイトで容易に購入可能となっていたが、いよいよWounded Bird Recordsより廉価再発が始まった。当時RHINOから通販購入した向きには痛し痒しだが、まあ名盤が安価で流通するようになったことは素直に喜ぶべきだろう。
タワーレコード限定再発は2013年も好調だったが、ようやくMIDIレコードが重い腰を上げてリマスター再発を始めたことはファンにとって朗報だろう。


では、2013年の再発でとりわけ印象深かったものを順不同で挙げておく。


○ MARIANNE FATHFULL / BROKEN ENGLSH


ようやくちゃんとした音質で再発された1979年リリースのアイランド・レーベル移籍第一弾。
当然のことながら、妖精と言われたデラム時代の面影は片鱗すら残っていないが、生死の境を乗り越えて発表した情念の傑作である。彼女の凄味をじっくりと味わいたい。

○ DUANE ALLMAN / SKYDOG

交通事故のため24歳で急逝した天才ギタリストの集大成的7枚組BOXセット。タイトルの「スカイドッグ」は、彼の愛称。
オールマン・ジョイスやアワー・グラスといった初期から、アトランティックに吹き込まれたソウル・ミュージシャンとのレコーディング・セッション、オールマン・ブラザーズ・バンドやデレク&ザ・ドミノス、後期までを余すところなく収録したレトロスペクティヴの名に恥じぬ力作である。
ファースト・プレスは瞬く間に完売したことからも、彼の根強い人気がうかがえる。

○ MILTON NASCIMENTO / COLECAO

近年のブラジルBOX物は凄いことになっている。エリス・レジーナ、ジョルジ・ベン、マルコス・ヴァーリ、ティン・マイア、ジンボ・トリオ…等々。
そして、ついにここまで来たかと感慨を新たにする20組の途轍もないBOXがこれだ。「ブラジルの声」とまで称されたミルトン・ナシメントのレーベル横断1968年から1986年までのキャリアを網羅するコレクターズ・アイテムだが、そのコンセプトは800ページ超のブックレットがメインでリマスターCDはあくまで付属品に位置付けられているところも凄い。正真正銘の決定版である。

○ VAN MORRISON / MOONDANCE

孤高のシンガーという形容がこれほどピッタリくるミュージシャンもいないのではないか。彼は、1964年のゼムでの活動から現在に至るまで、紆余曲折はあるものの一貫して優れた創作活動を続けている。一時は、ミュージック・ビジネスに嫌気がさして引退宣言をしたこともあったが、およそ駄作のない人である。
名作・傑作数知れずだが、ヴァン・モリソンでどれか一枚…と言われたら、やはり僕は迷わず本作を挙げる。とにかく、全曲がパーフェクト。今回の再発は、blu-ray Audio付き5枚組と2枚組の通常盤がリリースされている。
余談ではあるが、「ムーンダンス」にはジョージィ・フェイムが『クール・キャット・ブルース』(1991)の中でカバーしたヴァージョンがあり、そこではヴァンとのデュエットを聴かせる。この盤も傑作なので、リマスター再発が待たれるところである。

○ JESS RODEN / HIDDEN MASTERS


ヴァン・モリソン同様、イギリスを代表するブルー・アイド・ソウル・シンガーである。この人も散発的にCD化はされていたが、ここにきてようやくちゃんとした音質で再発されるようになった。その決定版が、この6枚組アンソロジーBOX。
アラン・ボウン・セット、ブランコ、バッツ・バンドといったバンド時代の音源からソロ、未発表音源までファン垂涎の内容となっている。ただ、このBOXは日本の独自企画というのがいささか寂しい。
なお、彼のソロ名盤『ファースト・ステップ』『愛の狩人』『ストーン・チェイサー』の初期3枚も、紙ジャケで日本のみすでにリリース済みである。

○ CAPTAIN BEEFHEART & HIS MAGIC BAND / TROUT MASK REPLICA

去年の『バッド・チェイン・プラー』正規盤に続いて、ようやく彼の代表作がリマスター再発された。これで、ビーフハート関係のリマスターはすべて出揃ったと言っていいだろう。
フランク・ザッパがプロデュースした本作は、ビーフハート3枚目のアルバムとしてザッパの立ち上げたストレイト・レーベルから1969年リリースされた。
ザッパもこの人もアヴァンギャルドの極北のようなミュージシャンとして捉えられていた時期が長いが、今聴くとブルースを基調としたオリジナリティ溢れる音楽を構築していたことがよく分かる。必聴盤である。

○ HUEY LEWIS & THE NEWS / SPORTS

1980年代のアメリカン・ロックをいい意味で体現していたバンド、それがヒューイ・ルイス&ザ・ニュースである。その彼らの代表作が、30周年記念盤として2枚組で再発された。1枚目にはアルバム全曲のリマスターが、2枚目にはそのライヴ・ヴァージョンが収録されている。
このバンドは、何と言ってもライヴが真骨頂だったから、まさに理想的な拡張盤である。良質な楽曲が揃い、それをライヴで叩き上げたドライヴ感で聴かせる一枚。悪いはずがない。

○ 大空はるみ / はるみのムーンライトセレナーデ

これは、タワーレコード限定再発の一枚。個人的には、まさしく待望であった。彼女は、かの三保敬太郎率いるホワイト・ボックス出身で、その後は高中正義や松岡直也のアルバムへの参加やTan Tan名義でソロ・アルバムをリリースしていた。
その彼女が、大空はるみとして再デビューしたのが1982年のこのアルバムである。加藤和彦がプロデュースした本作は、シンセサイザーを使いつつもノスタルジックなアレンジを施してあり、音の感触としてはドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンドに通ずる洒脱な楽曲が揃っている。彼女のハスキーなボーカスも抜群の冴えを見せる。

○ RIP RIG + PANIC / GOD

ポップ・グループから派生したバンドの中で、唯一正規のCD化が遅れていたのが彼ら。権利関係の問題からか、一度アナウンスされた再発も中止になった経緯がある。それがようやく、オリジナル・マスターからの再発。しかも、シングル曲が追加された文句なしのリイシューである。
日本において彼らの音を認知させたのは、言うまでもなく桑原茂一の『スネークマン・ショー』であるが、パンクを通過した後の尖鋭的なダンス・ミュージックは今こそ再評価されて然るべきだろう。

○ 高中正義 / SUPER TAKANAKA LIVE!

1979年12月23、24日に日本武道館で行われた井上陽水とのジョイント・ライヴ「クリスマス・スーパー・ライブ」の模様を収めた名盤で、当時キティ・レコードから発売されたアルバムは今回すべて再発された。
これはUniversal Fusion Breeze SHM-CDコレクションの一枚だが、こういう作品こそコンプリート・エディションでの再発を望みたいものである。

○ HONEY LTD. / THE COMPLETE LHI RECORDINGS

ソフトロック・ファンにとって、これはもう本当に待ちに待った一枚だろう。1967年にママ・キャッツとして活動を始めた女性4人組は、翌年リー・ヘイゼルウッドのLHIレーベルから名前を変えてデビュー。しかし、メンバー脱退を期にアルバム一枚のみで消えてしまった。
本作は、彼女たちの音源をすべて収録した決定版である。バッキング・メンバーはレッキング・クルーの面々が固めているのだから、いいに決まっている。60年代ガールズ・グループ・ファンの心鷲掴みだろう。

○ JIGSAW / COMPLETE SINGLE COLLECTION

これも、日本オンリーの企画。リリースがアナウンスされては発売中止を繰り返し、ようやくのリリースとなった。イギリスでの発売順にシングルのAB面をすべて収録した3枚組は、まさしくコンプリートな内容である。
ジグソーといえば条件反射的に「スカイ・ハイ」を連想する人がほとんどだろうが、英国屈指の洒脱なメロディーとハーモニーを存分に堪能して頂きたいものである。

○ かしぶち哲郎 / リラのホテル

MIDIレコードからようやく再発されたリマスター盤。本作の他には、彼の『彼女の時』や大貫妙子

『コパン』『スライス・オブ・ライフ』、坂本龍一『戦場のメリークリスマス』『CODA』も発売された。
ムーンライダーズでドラムを叩いていた彼が1983年に発表したファースト・ソロ・アルバムで、共同プロデュースは矢野顕子。アルバム内では、矢野のボーカルも聴くことができる。
洗練されたテクノポップ・テイストなアレンジが施されたヨーロピアン・エレガントを感じさせるシックな曲の数々は、まさに珠玉という言葉が相応しい。
去年の12月17日に食道癌のため亡くなってしまったことが、本当に惜しまれる。

○ 山下達郎 / MELODIES

1983年に、それまで在籍していたRCA/AIRから設立したばかりのムーン・レコードに移籍しての第一弾。ボーナス・トラック5曲を含む30周年記念リマスター盤である。
数ある山下の名盤の中でも、その完成度は一二を争う素晴らしさ。かの有名曲「クリスマス・イブ」や「高気圧ガール」(曲の途中で聞かれる溜息は、愛妻・竹内まりやのもの)を収録しているが、他の曲も隠れた名曲揃いである。
当時の彼は、「夏だ!海だ!達郎だ!」と季節商品のように聴かれており、そのパブリック・イメージを覆すために本作を作ったと回想している。隙のない内容は、完全主義者・山下達郎の面目躍如だろう。

○ ザ・フォーククルセダーズ / 紀元貳阡年

日本のポピュラー・ミュージック史に突如として現れた彼らは、一年間という期限付きの活動の中でまさに歴史を変えてしまったグループである。
自主製作レコードの先駆けともいえる『ハレンチ』に収録された「帰って来たヨッパライ」のエピソードをここであらためて紹介する必要もないだろう。
その『ハレンチ』、メジャー発売の『紀元貳阡年』、当時は発売禁止となった名曲「イムジン河」にレア映像を収めたDVDの決定的4枚組。
あんぐら、インディーズ、諧謔、洒脱、尖鋭のすべてが凝縮された蒼き才能が輝きを失うことは永遠にないだろう。

はてさて、2014年はどんな驚きの再発が待っているだろうか…。


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