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ざ☆よろきん『晒場慕情~恋慕の木遣り唄~』

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1月5日、池袋シアターグリーンBASETHEATERにて萬屋錦之助一座「ざ☆よろきん」二〇一四年新春本公演『晒場慕情~恋慕の木遣り唄~』を観た。




本公演は、グリーンフェスタ2014特別参加作品であり、『火消哀歌~冬空の木遣り唄~』(BIG TREE THEATER)、『振袖大火~吉原木遣り唄~』(BOX in BOX THEATER)と同時公演されたものである。役者の一部は、劇場を行き来して他作品にも出演している。

演出は柿ノ木タケヲ(ゲキバカ)、脚本は朝比奈文邃、舞台監督は篠原絵美、美術は齊藤樹一郎、音楽は小林成宇・ぱくゆう、音響は池田野歩、照明は富山貴之、照明操作は内山唯美、振付は岸下香、衣裳は車杏里・林梨沙子・小野瀬みらい・佐野このみ・亀井美緒。
制作は倉重千登世・金田愛里・鎌田亜沙佳・新井真理子・金指諒子、総合制作は畑中晋太郎、プロデューサーは朝比奈文邃、企画制作は株式会社リロ・プロダクション、製作は株式会社アリー・エンターテイメント、主催はシアターグリーン、株式会社アリー・エンターテイメント。


こんな物語である。

年の瀬の江戸。日本橋の袂にある晒場隣で店を構える居酒屋よろずは、今夜も常連客で賑わっている。店を切り盛りする女将おいく(上田郁代)はキップの良さが評判だが、家出して随分になる一人息子のことを心に秘めている。
従業員は、もえ(袴田まお)、もも(音河亜里奈)、もこ(長島実咲)、千歳(奥田奈未)と皆女性で、彼女たち目当ての客も多い。
常連客の一人で南町奉行の羽原三太夫(島英津夫)はおいくとは古い馴染みで、おいくは従業員たちと共に羽原の依頼で町の情報収集もしている。今、おいくたちは江戸に頻発する不審火のことを探っていた。



火消の新八(木田健太)は、静玉屋の花魁・吾妻(松本理沙)とねんごろになり彼女会いたさに吉原通いを続けたが、所詮は薄給の身。すぐに金は尽きて、身請けはもとより揚げ代すら吾妻が持つようになった。
仕方なく、二人は「心中します」の書置きを残して新八が掘った地下道で足抜け。偽装心中して、二人ひっそり所帯を持とうと計画した。
脱走こそ成功したものの、二人が穴から出るとそこは何とよろずの店内。間が悪いことに、店では常連の同心見習い重松(猪狩和真)、冨松(井上翼久)、三郎太(シトミ祐太朗)が飲んでおり、そのまま二人は御用となってしまう。
すると、おいくは驚きの表情を浮かべる。新八こそ、彼女が探していた一人息子だったのだ。

正月早々、新八と吾妻は三日間晒しの刑に処せられるが、何やら二人は晒場で痴話喧嘩を始める。見張り番の三郎太の言うことなどまったくお構いなしの上、隣の居酒屋客も交えて酒まで飲み出す有様だ。
しかも、吾妻が年季奉公に出る前の知り合いで彼女に恨みを持つくま(高橋奈津季)とはつ(北川千晴)がちょくちょくやって来ては、嫌がらせした。
ようやく三日が終わり、二人は晒場から解放された。とりあえず、行き場のない新八と吾妻はよろずで厄介になることに。静玉屋から身を隠さねばならない吾妻をおいくは従業員として雇ってやった。
実はおいくも元は花魁で、彼女は吉原の伝説として今も語り継がれていた。母のそんな過去を嫌って、新八は家を飛び出したのだった。

三郎太は、旗本阿部家のお嬢様つる(下垣真香)と想いを通わせていたが、所詮は身分の違う恋。屈託のないつるとは違い、三郎太はすべてを捨てて彼女を奪い取る勇気が持てずにいた。
新八はおいくと和解。よろずで過ごす日々の中で、新八と吾妻の仲もまた親密さを取り戻していた。

しかし、そうそういいことは続かない。とうとう吾妻の居場所を嗅ぎつけ静玉屋の遣いの者が、彼女を連れ戻しにやって来た。
その一方、江戸のそこかしこでは幕府転覆を目論む不当の輩の手による放火が、いよいよ深刻な被害を出していた。
半鐘が鳴り響き、江戸八百八町は火の海と化した。新八は吾妻を助けに吉原に走り、阿部家が出火したとの報を聞いた三郎太は、つるを助けに向かった。
火付の下手人を内偵していた千歳は、おいくが止めるのも聞かず犯人の後を追った。




果たして、江戸の町は?新八と吾妻、三郎太とつるの恋の行方は?


そもそも、僕がこの舞台を観る気になったのは鴻上尚史主宰・虚構の劇団を辞めた高橋奈津季が久しぶりに舞台に立ったからである。それ以外の興味はなかった。
本公演を観ての端的な感想を述べさせてもらえば、良い部分と駄目な部分があまりにもはっきりした舞台だということである。

駄目な部分から指摘しておく。

とにかく、くすぐりがあまりにおやじギャグ・レベルで笑うに笑えない。これだけ若い役者を揃えた舞台で、何故にここまでベタにつまらないネタをかます必要があるのか?
江戸時代の居酒屋で「おいC~」だの、カクテル注文だの…と。
あるいは、おいくの人生を紙芝居仕立てで説明するシーン。EXILEネタが繰り返されるのは、ヒロインの松本理沙がLDH(EXILEのHIROが代表取締役社長)所属タレントだからか?まあ、どうでもいいが。
吾妻の祖母おとめ(法城寺エイト)のネタでは、観ていて痛々しく感じてしまった。
くまとはちが吾妻をいびるシーンも、下らな過ぎてどうかと思う。久々に高橋奈津季が舞台に立ったのは、嬉しかったのだけど。
唯一笑えるのは、一膳飯屋満腹従業員のかめ(沙神有希)と卯の助(高畑岬)のベタな絡みくらいである。

それから、吾妻・つるという女性二人がなかなかに魅力的なのに比べて、あまりに男たちに魅力がなさ過ぎではないか?
正直に言って、彼女たちが新八や三郎太に惹かれることに僕はドラマ的リアリティを感じることができなかった。
男性キャラクターの構築に、作者の思い入れが感じられないのだ。

では、良い部分を。

先に述べてしまったが、松本理沙演じる吾妻下垣真香演じるつるが、魅力的である。彼女たちの雰囲気も役によく合っていて、なかなか良いキャスティングだと思う。二人の演技も悪くない。
特に、吾妻ははまり役と言っていいだろう。

笑い中心でグダついている前半と違い、後半に入って展開がシリアスになると舞台は一変する。いきなり、ダイナミックに疾走するのだ。
そして、つると三郎太、おいくと千歳、吾妻と新八といった感傷的なシーンには、演出の冴えを感じた。
また、狭い舞台でのダンス・シーンは、なかなか演出がシャープで見応えがあった。

ただ、同時三公演で役者が出入りするアクロバティックな構成故、どうにも煮え切らない部分が散見されたことも不満である。
南町奉行のエピソードも上っ面だけだし、政五郎(小野塚勇人)とお文(沢辺りおん)の話はそれだけで一本の物語になるだろう。男の登場人物で、僕が唯一魅力を感じたのが政五郎だった。

本作は、役者陣の演技に比して脚本に問題を抱えた舞台。
やりようによってはもっと面白い作品になったと思うので、何かと後にフラストレーションが残る観劇であった。


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