新年のお約束企画、再発CDアワード。まあ、僕が勝手に振り返ってるだけですが。そんな訳で、去年一年間のCD再発市場を検証して行こう。
再発の状況そのものは、ここ数年あまり目新しい変化がないように思う。集大成的な大箱とか、一枚の歴史的名盤にこれでもかとアウトテイクや未発表ライヴを詰め込む学術的とも思えるBOX、あるいは何度目かと思われるような紙ジャケ&リマスター再発やさらなるCD新素材を使った高音質盤という手を替え品を替えなもの。
2014年の再発シリーズについて言及すると…。
ユニバーサルのキャピトル名盤紙ジャケ/SHM-CDコレクション、ベンチャーズ来日記念盤リバティ名盤SHM-CD/紙ジャケット・コレクション、ユニバーサルFree Soul“Value”Collection、BRIND X SHM-CD紙ジャケット・シリーズ、ユニバーサルREBEL-JAZZ/反逆のジャズ紙ジャケット・コレクション、イギー・ポップSHM-CD/紙ジャケット・コレクション、コロムビアのタクト・レーベル ピアノ・トリオ紙ジャケ/Blue-specCDコレクション、向井滋春紙ジャケット・コレクション、ウルトラ・ヴァイヴのエンヤ・オリジナル・アルバムズ・ストレイト・リイシュー・シリーズ、ボンバ・レコードのブラジル音楽名盤1000シリーズ2014、ディスク・ユニオンのKTIレーベル・シリーズ辺りが、なかなかのいい仕事ぶりだった。
そして、屈指の好企画だったのがタワーレコード限定の吉田保リマスタリング・シリーズだろう。
海外の新興レーベルでここ数年注目すべき再発を続けているのは、REAL GONE MUSIC、BIG PINK MUSIC、CHERRY REDの傍系レーベルCHERRY POP、PROG TEMPLE、CULTURE FACTORYではないだろうか。
それにしても、ここ数年目立つライヴ放送音源のCD化というのが、著作権的にどうなっているのかとても気になるところである。内容的にも音質的にも見逃せないアイテムが、結構あるのだが。
では、2014年の再発で個人的に嬉しかったものを順不同で挙げておく。
○ BOBBY WOMACK / UNDERSTANDING
2014年6月27日に惜しくも亡くなったソウル・ジャイアンツの一人である。なかなか進まなかった旧作のリマスター再発が、ここにきてまとめて実現した。基本的に駄作のない人だが、代表して1972年にUNITED ARTISTSからリリースされた本作を。
今年は、いよいよTHE VALENTINOSのCD再発が控えている。
○ 加藤和彦 / バハマ・ベルリン・パリ
実はこれ、書籍にCD3枚が付属しているという扱いなのだが、まさに待望の『パパ・フェミングウェイ』『うたかたのオペラ』『ベル・エキセントリック』というヨーロッパ三部作の完全復刻盤である。
この三部作は、2004年に一度オーマガトキから紙ジャケで再発されているが、リマスターと謳われていたにもかかわらず音圧が低かった上に『パパ・フェミングウェイ』に至っては「レイジー・ガール」がオリジナルの佐藤奈々子とのデュエット・バージョンではなかった。今回は、ようやくのオリジナル版リマスターでの復刻である。
充実した資料盆共々、まさに家宝的なBOXセットである。
○ 大滝詠一 / EACH TIME
誰もが耳を疑った、2013年12月30日の大滝詠一の急逝。そして、本作は1984年に発表された最後のオリジナル・アルバムの30周年リマスター盤である。そして、このリマスター作業が彼の最期の仕事となってしまったのも、ある意味示唆的である。
ちなみに、この再発でも、「レイクサイドストーリー」のオリジナル・バージョンは収録されなかった。
12月3日には生前に構想のあったベスト盤『BEST ALWAYS』がリリースされ、そこでは11年ぶりの新録となる名曲「夢で逢えたら」の本人歌唱バージョンが収録された。2015年3月21日には、『NIAGARA CD BOOK Ⅱ』のリリースが予定されており、そのうちの一枚『EACH TIME』には「レイクサイドストーリー」オリジナル・バージョンが収録される予定である。
○ BOB DYLAN / HARD RAIN
再発の状況そのものは、ここ数年あまり目新しい変化がないように思う。集大成的な大箱とか、一枚の歴史的名盤にこれでもかとアウトテイクや未発表ライヴを詰め込む学術的とも思えるBOX、あるいは何度目かと思われるような紙ジャケ&リマスター再発やさらなるCD新素材を使った高音質盤という手を替え品を替えなもの。
2014年の再発シリーズについて言及すると…。
ユニバーサルのキャピトル名盤紙ジャケ/SHM-CDコレクション、ベンチャーズ来日記念盤リバティ名盤SHM-CD/紙ジャケット・コレクション、ユニバーサルFree Soul“Value”Collection、BRIND X SHM-CD紙ジャケット・シリーズ、ユニバーサルREBEL-JAZZ/反逆のジャズ紙ジャケット・コレクション、イギー・ポップSHM-CD/紙ジャケット・コレクション、コロムビアのタクト・レーベル ピアノ・トリオ紙ジャケ/Blue-specCDコレクション、向井滋春紙ジャケット・コレクション、ウルトラ・ヴァイヴのエンヤ・オリジナル・アルバムズ・ストレイト・リイシュー・シリーズ、ボンバ・レコードのブラジル音楽名盤1000シリーズ2014、ディスク・ユニオンのKTIレーベル・シリーズ辺りが、なかなかのいい仕事ぶりだった。
そして、屈指の好企画だったのがタワーレコード限定の吉田保リマスタリング・シリーズだろう。
海外の新興レーベルでここ数年注目すべき再発を続けているのは、REAL GONE MUSIC、BIG PINK MUSIC、CHERRY REDの傍系レーベルCHERRY POP、PROG TEMPLE、CULTURE FACTORYではないだろうか。
それにしても、ここ数年目立つライヴ放送音源のCD化というのが、著作権的にどうなっているのかとても気になるところである。内容的にも音質的にも見逃せないアイテムが、結構あるのだが。
では、2014年の再発で個人的に嬉しかったものを順不同で挙げておく。
○ BOBBY WOMACK / UNDERSTANDING
2014年6月27日に惜しくも亡くなったソウル・ジャイアンツの一人である。なかなか進まなかった旧作のリマスター再発が、ここにきてまとめて実現した。基本的に駄作のない人だが、代表して1972年にUNITED ARTISTSからリリースされた本作を。
今年は、いよいよTHE VALENTINOSのCD再発が控えている。
○ 加藤和彦 / バハマ・ベルリン・パリ
実はこれ、書籍にCD3枚が付属しているという扱いなのだが、まさに待望の『パパ・フェミングウェイ』『うたかたのオペラ』『ベル・エキセントリック』というヨーロッパ三部作の完全復刻盤である。
この三部作は、2004年に一度オーマガトキから紙ジャケで再発されているが、リマスターと謳われていたにもかかわらず音圧が低かった上に『パパ・フェミングウェイ』に至っては「レイジー・ガール」がオリジナルの佐藤奈々子とのデュエット・バージョンではなかった。今回は、ようやくのオリジナル版リマスターでの復刻である。
充実した資料盆共々、まさに家宝的なBOXセットである。
○ 大滝詠一 / EACH TIME
誰もが耳を疑った、2013年12月30日の大滝詠一の急逝。そして、本作は1984年に発表された最後のオリジナル・アルバムの30周年リマスター盤である。そして、このリマスター作業が彼の最期の仕事となってしまったのも、ある意味示唆的である。
ちなみに、この再発でも、「レイクサイドストーリー」のオリジナル・バージョンは収録されなかった。
12月3日には生前に構想のあったベスト盤『BEST ALWAYS』がリリースされ、そこでは11年ぶりの新録となる名曲「夢で逢えたら」の本人歌唱バージョンが収録された。2015年3月21日には、『NIAGARA CD BOOK Ⅱ』のリリースが予定されており、そのうちの一枚『EACH TIME』には「レイクサイドストーリー」オリジナル・バージョンが収録される予定である。
○ BOB DYLAN / HARD RAIN
順調に進んでいたボブ・ディランのリマスター再発だったが、途中でパッタリ止まってしまった。それが、ようやく一応の完結を見た。その中でも僕がずっと待っていたのが、白塗りに隈取りしたようなメイクのディランというジャケットも異色な、1976年のローリング・サンダー・レビューでの演奏を収録したこのライヴ盤だ。
ジャケット写真そのままのような挑発的なアレンジとアグレッシヴなプレイは、時代を越えて刺激的だ。
○ JAMES BROWN / SEX MACHINE
ようやく、CULTURE FACTORYからリマスター再発された名盤。内容の素晴らしさは今さら言うまでもないが、彼のようなミュージシャンこそストレイトなリイシューより、デラックス・エディションでの再発が望まれるのではないか。
実のところ、僕が一番出してほしいのは、Part1、Part2に別れているシングル盤をフル・レングス・バージョンで収めた決定的なシングル・コレクションなのだが。
○ 竹内まりや / VARIETY
山下達郎との結婚後、3年間の休業を経て1984年にリリースされた彼女の代表作の30周年記念盤。ボーナス・トラックもふんだんに収録され、リマスタリングと本人によるライナーノーツも完備されたまさしく決定版である。
なお、同じMOONレコードからリリースされた山下達郎『BIG WAVE』も、30周年記念盤としてリマスター再発された。
○ THE MOPS / PSYCHEDELIC SOUNDS IN JAPAN
ゴールデン・カップスと並んでロック・バンドとしての評価が高いGSといえば、モップスである。入手困難なアルバムもあったが、ようやくここにきてすべてのオリジナル・アルバムがボーナス・トラック付きで再発された。
中でも、放送禁止用語が使われているためしばらく音盤化されていなかった人気曲「ブラインド・バード」が収録された1968年発表のデビュー・アルバムも、ようやくオリジナル通りの再発となった。
○ ELVIS PRESLEY / THAT’S THE WAY IT IS
映画『エルヴィス・オン・ステージ』にも記録された1968年のキング・エルヴィスのカムバック・ステージの模様を余すことなく伝える名盤。今更、その素晴らしさをくどくどと説明する必要すらないだろう。ジャンルさえ超越したような、パーフェクトなパフォーマンスである。
CD2枚組の通常LEGACY エディションとCD8枚+DVD2枚のスーパー・デラックス・エディションの二種類でリリースされている。
○ CURTIS MAYFIELD / BACK TO THE WORLD
シカゴ・ソウルの巨人の一人。ファルセット・ヴォイスにワウワウ・ペダルを駆使したギターと、一聴しただけで彼と分かる個性的な音楽スタイル。何度もCD再発はされているが、なかなかちゃんとした音質の物はなかった。それが、ようやくワーナーから廉価のリマスター盤で再発された。
同時発売の『SWEET EXORCIST』(1974年)もいいが、ここはやっぱり1973年発表のこちらを選びたい。後にハービー・ハンコックがクラブ・ミュージック的文脈でカバーした「FUTURE SHOCK」のオリジナルも収録されている。
さあ、次は是非とも1975年の大傑作『THERE’S NO PLACE LIKE AMERICA TODAY』をお願いしたいものである。
○ 南佳孝 / SOUTH OF THE BORDER
ここに来て、南佳孝もリマスター再発が動き出した。そして、ようやく吉田保リマスタリング・シリーズの一枚として池田満寿夫のジャケットも印象的な1978年発表のこの傑作も再発された。名曲揃いだが、中でも「プールサイド」は南を代表する名曲だろう。
なお、吉田保リマスタリング・シリーズは、他に吉田美奈子(彼女は、吉田保の実妹)とハイ・ファイ・セットがラインナップされている。
○ ゴジラ伝説
この再発を心待ちにしていたジャパニーズ・テクノ&ニュー・ウェーヴ好きも結構いたのではないか。1983年から1984年にかけて発売された『ゴジラ伝説』『ゴジラ伝説Ⅱ』『ゴジラ伝説Ⅲ』に加えて、新録音の『ゴジラ伝説Ⅳ』も入った決定版4枚組BOXである。
アレンジとシンセサイザー・プログラミングは、当時ヒカシューのキーボード担当だった井上誠。伊福部昭の荘厳な楽曲を、シンセサイザー中心にアレンジした演奏はレトロ・フューチャー的に不思議な魅力を放っている。
○ 伊東ゆかり / THE LOOK OF LOVE
昭和の歌謡シーンに登場した女性歌手の中でも、非常に歌の上手い歌手が伊東ゆかりである。竹内まりやがカバー・アルバム『LONGTIME FAVORITE』(2003年)の中で取り上げた「恋する瞳」は、伊東ゆかりのサン・レモ音楽祭入賞曲で和製カンツォーネの名曲。
その効果もあってか、ここにきて伊東ゆかりのアルバム復刻が盛んになっている。このアルバムは、1968年と1969年に録音されたソフト・ロックの名曲を集めた編集盤。その洒脱な歌とアレンジは、今こそ再評価されるべき洗練を極めた素晴らしい内容である。
○ 笠井紀美子 / THIS IS MY LOVE
クールな美貌を備えたジャズ歌手といえば、笠井美紀子で決まりだ。彼女のアルバムも一時は聴くことが困難だったが、初期のジャズ盤から少しずつ再発が進んでいた。ポップス・ファンにとっては山下達郎「バイブレイション」収録の『TOKYO SPECIAL』(1977年)だろうか。
そして、ジャズ・シンガーとしての個性とポップでソフィスティケイトされたアレンジメントが化学変化的な輝きを見せるのが1975年発表の『マイ・ラヴ』だ。
また、ソニーのオーダーメイドファクトリーでは、かまやつひろしプロデュースによる歌謡アルバム『アンブレラ』(1972年)も再発が実現した。
○ HIGH RISE / PSYCHEDILIC SPEED FREAKS
日本にとどまらず、世界中のサイケデリック・ミュージック・ファンから評価されているのがハイ・ライズだ。成田宗弘がかき鳴らすハード・サイケデリックなギターは、まさに麻薬的な陶酔感をもたらす。
そんな彼らのアルバム群の中でも、ファースト・アルバムは特別な一枚だった。1984年に300枚限定でリリースされたこのアルバムは、成田宗弘が一枚一枚自らスプレー印刷したハンドメイドで、ずっとCD化されていなかった。それが、今回アナログ盤同様成田のスプレー印刷を再現して、500枚限定での復刻が実現。まさに、それは事件と言っていいだろう。
また、1988年5月17日に新宿アンティノックで行われた彼らの初ワンマン・ライブで物販された幻の8曲入りカセット・テープも、ボーナス曲入りの『TAPES+』として復刻された。
○ SIOUXSIE AND THE BANSHEES / PEEPSHOW
セックス・ピストルズの親衛隊だったスージー・スーがベースのスティーヴ・セヴェリンと結成したスージー&ザ・バンシーズは、パンクから始まって徐々にその音楽性を変貌させて行ったバンドだった。その後期作品が、めでたくリマスター再発された。
その中でも、僕のお気に入りだったのが1988年リリースの『ピープ・ショー』である。ここで聴かれる音楽性は、もはやパンクでも呪術的でもない。バンシーズ流ヒップホップな面持ちの「ピーク・ア・ブー」に始まり、様々な表情の音楽を雑多に詰め込んだような作品集で、ここには彼らなりに時代と対峙した音を聴かせてくれるのである。その外連味のなさこそ、本作の魅力だと思う。
さて、ここ数年はいささかの停滞を感じさせる再発市場だが、2015年はどんな驚きの再発があるだろうか。期待したい。
そんな彼らのアルバム群の中でも、ファースト・アルバムは特別な一枚だった。1984年に300枚限定でリリースされたこのアルバムは、成田宗弘が一枚一枚自らスプレー印刷したハンドメイドで、ずっとCD化されていなかった。それが、今回アナログ盤同様成田のスプレー印刷を再現して、500枚限定での復刻が実現。まさに、それは事件と言っていいだろう。
また、1988年5月17日に新宿アンティノックで行われた彼らの初ワンマン・ライブで物販された幻の8曲入りカセット・テープも、ボーナス曲入りの『TAPES+』として復刻された。
○ SIOUXSIE AND THE BANSHEES / PEEPSHOW
セックス・ピストルズの親衛隊だったスージー・スーがベースのスティーヴ・セヴェリンと結成したスージー&ザ・バンシーズは、パンクから始まって徐々にその音楽性を変貌させて行ったバンドだった。その後期作品が、めでたくリマスター再発された。
その中でも、僕のお気に入りだったのが1988年リリースの『ピープ・ショー』である。ここで聴かれる音楽性は、もはやパンクでも呪術的でもない。バンシーズ流ヒップホップな面持ちの「ピーク・ア・ブー」に始まり、様々な表情の音楽を雑多に詰め込んだような作品集で、ここには彼らなりに時代と対峙した音を聴かせてくれるのである。その外連味のなさこそ、本作の魅力だと思う。
さて、ここ数年はいささかの停滞を感じさせる再発市場だが、2015年はどんな驚きの再発があるだろうか。期待したい。